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2019年5月14日のマーケット・コメント

米中貿易戦争激化

 

昨日、米通商代表部(USTR)は、現在関税の対象になっていない合計3,000億ドルの中国製品に対する25%の制裁関税の詳細内容を公表しました。6月17日から公聴会を開催するとされており、これまでの例を踏まえると、最も早ければ6月28,29日に大阪で開催されるG20直後の7月1日から追加関税発動となる見込みです。トランプ政権はG20開催時に米中首脳会談を持ち、習主席に妥協を迫る狙いがあると思われます。一方、中国は2,000億ドルに対する関税が10%から25%に引き上げられたことに対抗し、これまで関税率5%だった合計600億ドルの米国製品に対する関税率を、6月1日から品目ごとに10%、20%、25%に引き上げることを表明しました。米中貿易戦争が一層激化してきたことは明らかであり、昨日の米国市場では米国株は大幅下落、米国債券は上昇(金利低下)、米ドル上昇(円は米ドル以上に上昇しドル円は下落)となりました。

 

中国製品に対する関税引き上げは、米国にとっては中国製品の購入価格の上昇となります。これに対する対応としては、1.米国企業が最終製品を値上げすることによりコスト上昇分を消費者に転嫁(インフレ上昇要因&小売売り上げ悪化要因)、2.米国企業がコスト上昇分を吸収(企業業績悪化要因)のどちらか(あるいは両方)ということになりますが、米国株下落、米国債券上昇(金利低下)という昨日の市場の反応は、1.よりも2.の影響が大きいということを織り込んでいると言えます。また、FF金利先物は、今年1回の利下げを織り込んだ状況にあり、こちらもインフレ上昇ではなく景況感悪化を織り込んでいます。

 

現状の株価水準は、NYダウで25,000ドル程度、日経平均で20,500円程度と見ている当面の下値目処に迫る水準となっており、そろそろ一旦下げ止まる可能性が出てきました。ドル円は昨日米国市場で安値109.02円と109円トライの動きまでありましたが、米国株が下げ止まれば、米国株がその後大きく反転しなくてもドル円は110円台回復となる可能性が高く、買い下がりスタンス継続で臨みましょう。

 

一方、中国関連銘柄を中心に景気敏感業種は、日経平均など指数が一旦下げ止まっても、予想以上に弱い業績見通しに加え、米中貿易戦争激化という状況を踏まえると、株価下落傾向が続く可能性が高いでしょう。当面の安値めどは、年初の安値だと思われます。