市場は全く準備していなかったトランプ発言に反応
日本が10連休中に海外市場が大きく動くリスクを警戒して連休入りしましたが、事前に市場変動の原因になる可能性があると思われていた、5月1日FOMCや5月3日米雇用統計は波乱無く通過し、連休明けの日本市場は穏やかにスタートするかと思えました。ところが連休の終盤の5月5日にトランプ大統領から「2,000億ドルの中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げる」とのツィッターへの書き込みがあり、昨日の米国市場では、米国株急落、ドル円急落、米国債券上昇(金利低下)という反応となりました。
昨日の米国株は下げ幅をかなり縮めての引けとはなりましたが、10連休明けとなる本日の東京市場では、年初来の株価の戻りが大きかった中国関連銘柄を中心に、景気敏感業種主導で日本株は下落しています。ドル円は、日本が休日だった昨日午前10時ごろに一時110.28円まで下落しましたが、その後同日中に110円台後半まで戻し、本日もその水準での推移が続いています。日本株は明らかに「リスク・オフ」の動きですが、ドル円は連れ安とはなっておらず、ドル円はもはやリスク・オン、オフでは大きく動かないことが確認されました。
企業業績ですが、連休前に全体のおよそ20%が発表終了し、本日以降に残りのおよそ80%の発表があるわけですが、連休前の発表分の内容に関しては「予想よりも良い」はほとんどなく、少数が「予想通りに微増益ないしは微減益」で、多数が「予想よりも悪い」でした。4月26日発表で「予想よりも悪い」で目立つのは、村田製作所(6981)小松製作所(6301)です。どちらも本日10%を越える下落となっています。
中国関連銘柄を中心に景気敏感株は、昨年10-12月に業績悪化懸念で大幅下落し、1月にはカラ売りの買い戻し主導で大幅に戻り、2、3月は米中貿易合意期待で底堅く推移し、4月は第3週までは中長期資金の業種リバランスによりもう一段戻った状況でした。それが、業績発表が始まった4月第4週から、業績の(懸念ではなく)実際の悪化を織り込み始めて、下落が始まった状況でした。実際の業績悪化に加えて、市場が全く準備していなかった「米中貿易交渉決裂」という可能性がトランプ大統領から飛び出し、完全に市場全体の流れが変わったと感じます。
結論としては、中国関連銘柄のカラ売り姿勢は継続、現状水準からはドル円は買い下がり始めでしょう。ドル円はポジション調整がまだ十分進んだとはいえず、3月安値の110円割れまでの下落は想定する必要がありますが、トレンドとして円高ドル安進行となる事は想定できず、最悪瞬間108円でも耐えられる余力コントロールをしながら買い下がりです。
来年に大統領選挙を控えるトランプ大統領にとって、米国株の大幅下落はなんとしても避けたいでしょう。実際に米国株が大幅下落した昨年12月には、現職大統領としては異例なほど米国株市場やFRBの金融政策に言及しました。そこで、今回のトランプ大統領のツイートの狙いですが、米中貿易交渉決裂という、可能性が否定できない事態になった場合に、市場がどのように反応するか試すことや、決裂の可能性を時間を掛けて市場に織り込ませてショック安を避けることなどが考えられます。
つまり、交渉決裂の織り込みで米国株が大幅下落するようであれば、発言のトーンを変え、米国株市場の下支えを図ることが想定されます。「トランプ・プット」とでも呼ばれるようになるかもしれません。相場全体の流れが完全に変わったのであれば、本来なら順張りで先物売りなのですが、そのような展開が想定されるため、先物を積極的に売り建てることには、トランプ発言により米国株指数が急反発するリスクを感じます。もし先物や指数連動ETFで、指数の下落をとりにいくのであれば、こまめな利食いが無難でしょう。