米国は対中国関税引き上げを正式通知-今後想定される展開
昨日米国通商代表部(USTR)は、2,000億ドルの中国製品に対する関税率を、5月10日午前0時1分(日本時間10日午後1時1分)に10%から25%に引き上げることを正式に通知しました。これに対して中国側は、対抗措置を講じる方針を表明した一方で、中国副首相は本日米国入りし、交渉継続の姿勢を示しています。今後想定される展開を以下に整理します。市場にネガティブな順番となっています。
1.関税引き上げ&交渉決裂
ワシントンでの9日10日の閣僚級協議で双方の溝が埋まらず、通知通り関税は25%に引き上げられ、トランプ大統領はこれ以上の交渉は意味がないとして、交渉決裂となる展開。
この展開の可能性は低いと考えます。交渉決裂は米中両政権にとって重要な外交交渉の失敗となり政権に打撃となることに加え、市場に大きなネガティブ・インパクトを及ぼすことが想定されるため、双方ともに望んでいないと思われるからです。
2.関税引き上げ&交渉継続
9日10日での閣僚級協議で合意には至らず、通知通り関税は25%に引き上げられるものの、更に時間をかけて合意を目指して交渉を継続。
私としてはこの展開の可能性が最も高いと考えます。米中両政権ともに交渉決裂ではなく交渉継続を望む一方で、トランプ政権側としては交渉合意という政治成果を求めて、合意に向けて中国が譲歩することに対して一段の圧力をかけたい状況だと思われるからです。
3.関税引き上げ見送り&交渉継続
9日の交渉では合意に至らないものの、中国側が譲歩の方針を表明して、10日からの関税引き上げは先送りされ、更に時間をかけて合意を目指して交渉を継続。
市場ではこの展開をメイン・シナリオ、上記2.をリスク・シナリオとしていると思われます。しかしこの展開になるとすれば、米国側としては状況を何も変えられなかった、中国側としては時間稼ぎに成功、ということになるため、この展開の可能性はほぼないと考えます。
4.関税引き上げ見送り&大枠での交渉合意
9日の交渉で中国側が一定の譲歩を表明し、大枠で交渉合意し米中首脳会談での正式合意に向けて日程調整。
中国副首相がわざわざ訪米することを考えると、この展開の可能性を完全に否定する事はできない一方で、各種報道で直近になって中国側が交渉合意から後退する主張をしていると伝えられており、交渉を前にして習主席が譲歩を却下した可能性が高いでしょう。訪米キャンセルでは上記1.が事実上確定してしまうため、中国側としては上記3.を獲得目標に訪米すると思われ、報道内容が正しければこの展開の可能性はない、と言えるでしょう。
結論としては、短期的には米中合意期待により株式市場が上昇を始める前の2月前半の安値水準までの下落が想定され、日経平均で言えば20,500円程度、NYダウで言えば25,000ドル程度までの下落が想定されます。そのときのドル円は110円割れの水準であり、現状水準からの下落余地はほとんどない、と言えます。一時的なショックにより1月30日FOMC後の安値である109円割れとなる可能性は否定できませんが、そこは絶好の買い場と捉えるべきでしょう。