やはり対メキシコ関税は取り止め-今後の市場展開は?
先週末にトランプ大統領はメキシコに対する関税導入の無期延期を表明し、対メキシコ関税は事実上取り止めとなりました。公式な発表はありませんが、メキシコが国境警備を強化することに加え、将来的には国境の壁建設費用の一部を負担することなどを表明した結果だと思われ、私の予想通りの展開です。
メキシコに対する関税導入が表明されたのは5月30日の米国市場引け後でした。5月30日の引け値は、NYダウが25,170、S&P500が2,789、日経平均が20,943円、TOPIXが1,532、米国10年国債利回りが2.21%、ドル円が109.63円でした。日米ともに株価は5月30日の水準を上回るまで戻っていますが、ドル円は米国10年国債利回りが2.12%までの戻り(金曜日引けは2.08%)に留まっていることを受け、108円台半ばまでの戻りと、戻りは限られています。米国10年国債利回りの戻りが鈍い背景には、先週金曜日に発表された米雇用統計が予想よりも弱く、年内2回の利下げ期待が収まっていない事があります。(ただ、対メキシコ関税の取り止め表明は、金曜日の米国市場終了後だったので、今日の米国市場で米国金利は現状よりも上昇する可能性はあります。)
FRBの金融政策に関して、現在の市場コンセンサスは「7月、9月、12月のいずれか2回に利下げを行い、いずれの場合も6月19日FOMCで声明文かドットチャートないしはその両方で将来の利下げを示唆する」だと思われます。6月FOMCまでは、FRB高官が発言を控える「ブラック・アウト」期間となるため、FOMCまではそのコンセンサスが変化することはないでしょう。
問題は、本当に6月FOMCで次の政策変更が利下げだと示唆されるかどうか、です。まだ対メキシコ関税が導入される見通しだった6月4日に、パウエルFRB議長は講演で「貿易交渉などの問題がどのように推移していくかわからないが、FRBは状況に応じて適切な対応を取る」と発言しています。状況が悪化すれば利下げもあり得る、ということですが、貿易問題に関しては対メキシコ関税取り止めにより、6月4日時点と比べれば状況は好転しています。
結論としては、6月FOMCで更なるハト派シフト(次の政策変更は利下げ、という示唆)はない、と予想します。それにより、行き過ぎた利下げ期待は後退すると思われます。具体的にいうと、市場が織り込む年内の利下げ回数は1.5回程度に低下、米国10年国債利回りは2.2%台を回復、ドル円は109円台後半まで上昇、と考えます。その場合の米国株の反応は微妙ですが、足元の株価反発を考えると調整する可能性が高いと考えられます。日本株は米国株の調整幅とドル円上昇の綱引きとなると思われますが、調整幅が限定的であれば円高懸念払拭を優先して、ボックス圏の高値(21,000円台半ば)トライの動きとなるのではないか、と思います。そこは、4-6月期業績悪化顕在化で生じると考えられる7月後半から8月の大きな下落に向けて、絶好の売り場となるでしょう。