ミョウジョウ・アセット・マネジメント株式会社の運営する会員制金融情報サイトです。

2019年7月30日のマーケット・コメント

半導体銘柄の株価見通し

 

世界的に半導体銘柄の上昇が続いています。米国のフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、年初来高値(史上最高値)を更新しました。米国半導体銘柄の業績発表を見ると、実績はほぼ予想通りに冴えないのですが、各社が今下期の需要急回復見通しを示していることが上昇の背景にあります。日本でも、業績がポジティブ・サプライズだったアドバンテスト(6857)だけでなく、業績は想定通りだった東京エレクトロン(8035)も年初来高値を更新しています。

 

更に今日驚きの株価反応を見せているのがSCREEN(7735)です。昨日発表された4-6月期営業利益はネガティブ・サプライズの赤字、中間期、通期ともに業績見通しは下方修正されました。しかし会社は昨日夕方の電話会議で、受注の底打ちと下期業績の急回復見通しを強調したようです。株価は本日安寄りしたあと急激に切り返し、年初来高値に迫るまでの上昇となっています。

 

中国を始めとする新興各国経済が減速継続、欧州経済は停滞、米国経済は悪くはないが一段の成長の勢いはない、という状況を考えると、私は下期急回復の可能性は低いと考えます。しかしながら、株価上昇の原動力が「下期急回復見通し」なので、その見通しに変化がない限り、株価の大きな変動はないでしょう。換言すれば、見通しに変化があれば株価は調整する、ということになります。その見通しに変化が起こるとすれば、以下の2つの可能性が考えられます。

1.世界のマクロ経済見通しが一段と悪化し、半導体業界にもその悪影響が及ぶとの見方になる。

2.半導体業界の受注動向が軟化し、下期急回復見通し実現の説得力がなくなる。

 

このうち1.は、いつでも起こり得ます。経済統計の発表だけでなく、政治・外交リスクの高まりも変化の原因になり得ます。政治・外交リスクの高まりとしては、トランプ政権による3,000億ドルの中国製品に対する追加関税発動、イランとの軍事衝突、中国での過剰債務問題表面化(大型の債務不履行)などが考えられます。一方、2.は今後の受注動向をしばらく観察する必要があり、時間がかかります。最も時間がかかる場合、3ヵ月後の次の業績発表まで待たなければならない可能性があります。

 

株価の前回の高値は4月につけています。その時は、下期回復見通しに加え、米中貿易交渉合意期待まで織り込んでいましたので、その水準を今後の株価の高値目処として妥当だと考えます。特殊要因があったアドバンテスト(6857)を除くと、主要半導体関連銘柄の株価は4月の高値水準にあり、これ以上の上昇余地は限定的でしょう。しかし「下期急回復見通し」に変化があるまでは、株価は高止まりの可能性が高そうです。カラ売りの収益化には少し辛抱が必要ですが、「見通しの変化」による次の株価調整幅は大きくなることが想定されます。