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2019年8月1日のマーケット・コメント

大注目のFOMC終了-市場は年内利下げをまだ過度に織り込んでいる

 

昨日、世界が注目する7月FOMCが終了しました。確実視されていた通り、FFレート誘導目標は2.25-2.50%から2.00-2.25%に引き下げられました。0.25%の利下げです。同時に、9月を目処に終了するとされていたFRBのバランスシート(保有債権残高)縮小が、中止されました。利下げという緩和方向の政策と、バランスシート縮小という引き締め方向の政策が並存するのは自己矛盾的だ、という意見を踏まえたと思われます。

 

声明文やパウエルFRB議長の発言で、今後のヒントになるものがいくつかありました。

「今回の利下げは長期にわたる金融緩和サイクルの開始ではなく、下ぶれリスクに対する保険」

「今回の利下げは、サイクル半ばでの調整」

「利下げは今回の1回限りとは限らない」

これらを素直に解釈すれば、

1.今回の利下げが引き締め方向のサイクルから緩和方向のサイクルへの転換ではない。継続的な利下げは行なわない。

2.年内の追加利下げの可能性は排除しないが、現時点ではその可能性が高いとは言えない。

ということになるでしょう。

 

年内にFOMCはあと3回(9月18日、10月30日、12月11日)ありますが、継続的利下げはしないということから、9月18日の次回会合での利下げはない、ということでしょう。10月、12月はこの先の状況次第、ということでしょうが、よほど世界経済や金融市場が混乱しない限り、10月も利下げは見送られる可能性が高いでしょう。12月は米中貿易戦争などの状況次第で、利下げがあるかどうかは未定ということだと思います。

 

つまり、FRBは年内の追加利下げに関して、「あっても1回でゼロ回の可能性もある」と考えていると思われます。一方、年末限りのFFレート先物は、年内あと0.315%の利下げを織り込んだ水準にあり、「1回の利下げは確実で、2回の可能性もある」ことを織り込んでいます。市場の利下げ幅の織り込みは、まだ過度な水準にあると思われ、年内の利下げ幅は0.20%程度への低下が見込まれます。

 

現在、米国10年国債利回りは2.04%で、その内訳は物価連動債利回りが0.29%、BEI(期待インフレ)率が1.75%となっていますが、年内の利下げ織り込みが後退すれば、物価連動債利回りは0.40%程度、BEI率は1.80%程度までの上昇が見込まれ、米国10年国債利回りは2.20%程度までの上昇となると思われます。ドル円は109円台回復まで上昇していますが、米国10年国債利回りが2.20%まで上昇すれば110円台回復となると思われます。

 

ただやや複雑なのは、米国株と金利水準と利下げ確率の関係です。米国株の今年の予想業績成長はほぼゼロで、年初時点からこの予想はほとんど変化ありません。つまり、年初からの米国株上昇は予想利益成長率の切り上がりではなく、もっぱら緩和方向への金融政策転換に期待したPERの拡大によるものです。つまり、利下げ期待が後退して金利上昇すると株価下落につながり、株価下落は利下げ織り込みの進行を通じて金利低下につながります。

 

この微妙なバランスが保たれているうちは、米国株、米国債券ともに波乱はなさそうですが、企業業績懸念から米国株までも下落した場合、債券市場の反応がどうなるか読めません。米国株下落を受けて金利水準が全体的に低下する可能性も、短期金利は低下するが長期金利はリスクオフから上昇する可能性もあります。株安、債券安は本来の理屈に合いませんが、今年振り返れば株高、債券高となっており、この逆も起こりえるということです。