ジャクソンホール会合で相場の新たな方向性は出るか?
今週は世界的に、株式、債券、為替ともに方向感のないもみ合いが続いています。その象徴が米国株で、8月初めの急落の半値戻しの水準で、月曜日は上昇、火曜日は下落、水曜日は上昇と、まさに日替わりの動きです。昨日米国で、0.25%の利上げを決定した7月31日FOMCの議事録が発表されましたが、その内容は「景況感が悪化した場合には追加利下げを行なう」「7月の利下げは長期的な利下げサイクルの始まりではない」とFOMC後に発表された内容に沿ったもので、新たな情報はありませんでした。
目先の注目材料は、8月23日に米ワイオミング州で行なわれるジャクソンホール会合です。ジャクソンホール会合とは、毎年この時期に開催されるカンザスシティー連銀主催の会合で、世界の主要中央銀行のトップが招待されます。これまで何度もこの会合でのFRB議長講演で、将来の政策変更が示唆され、市場の方向性に変化を与えたことがあったことから、今回もパウエルFRB議長の講演内容に注目されています。
年内の利下げに関して、まず市場の織り込みを見ると、年末限りのFFレート先物は昨日時点で1.58%、実効FFレートは2.13%なので、0.55%の利下げを織り込んでいることになります。1回の利下げが0.25%だとすれば2回強、つまり「2回は確実で場合によっては3回」という織り込みです。一方、想定されるパウエル議長の講演内容は、7月31日FOMCの内容と、その後の新たな変化(経済指標に大きな変化はないため、主に3,000億ドルの中国製品に対する関税発動)を考えると「9月18日の次回会合で追加の予防的利下げを行なうが、その後は状況次第。利上げサイクルから利下げサイクルに転換したのではなく、あくまでも一時的調整。」となると思われます。これを年内の利下げ回数で表現すれば「1回は確実で場合によっては2回。3回の可能性を否定はしないが可能性は低い。」となるでしょう。
つまり、講演内容が市場織り込み以上にハト派的となる可能性はなく、市場の捉え方としては「(現時点ではそれ以上ハト派的表現は出来ないことは理解できるので)想定通り」ないしは「想定よりもハト派色が薄い」でしょう。つまり債券市場では、金利は横ばいないしは上昇という反応が想定されます。問題は金利上昇(債券下落)となった場合の米国株の反応ですが、前回のコメントでご説明したとおり、債券と株の相関が「債券安株高」となったのであれば、米国株は上昇ということになります。ただ、金利上昇が景況感好転によるものではなく、金融政策に対する失望によるものであることを考えると、米国株は下落する可能性が高いと考えます。年初からの「債券高株高」の裏の「債券安株安」という相関です。
日本株ですが、8月5日の米国株大幅下落を受けた8月6日に、安寄りから場中に大幅に切り替えして以来、上にも下にも米国株に対する感応度が鈍い状態が続いています。8月14日の米国株大幅下落を受けた8月15日も下落は限定的で、8月16日と19日の米国株大幅反発を受けた8月19日と20日は上昇は限定的でした。本日も昨日の米国株上昇に比べると上昇は限定的です。この背景ははっきりしませんが、この間、現物株も先物も売買代金が少ないことを考えると、中長期資金が動かない中、先物を売買する短期投資家が、20,000円は固いが21,000円は重い、という短期見通しに基づいてトレーディングを行なっている、という可能性が高いと思います。
21,000円を越えて上昇する可能性が感じられない以上、カラ売り姿勢継続で問題ないと考えますが、20,000円を下回って下落するためには、限度を越えた米国株の下落が必要なのか、あるいはドル円の105円を下回るまでの下落が必要なのか、見極める必要があるでしょう。それが見極められるまでは、20,000円に迫ったら少しカラ売りポジションを軽くし、20,500円を大きく越えたら売り直す、という対応をするしかないでしょう。もちろん、20,500円を大きく越えたところ(例えば現在の水準)でカラ売りポジションを取り、下抜けするまで放置でも問題ありません。