またも米中貿易戦争激化にかき消されたパウエル発言
8月23日のジャクソンホール会議では、パウエル議長は講演で「米国経済の行く末に高い不透明感がある」「追加の予防的利下げを行なう用意がある」とし、次回の9月18日FOMCで0.25%の追加利下げ決定を示唆しました。しかしそれは事前の想定の範囲内で、市場インパクトは限定的でした。先週金曜日の米国市場で市場インパクトを与えたのは、またしても米中貿易戦争激化でした。8月23日に中国政府は、750億ドルの米国製品に対する報復関税強化を表明し、これに対してトランプ大統領は即座に対抗措置を取ることを表明し、米国株は大幅下落、米国債券は上昇(金利低下)、米ドル下落となりました。
前回7月31日FOMCで0.25%の予防的利下げを決定した翌日にも、トランプ大統領は3,000億ドルの中国製品に対する関税発動を表明し、パウエル議長の発言をかき消したことがありました。これで2度目であり、トランプ大統領はパウエル議長を翻弄しているかに見えます。金曜日の米国市場が終了した後、米国政府により対抗措置の具体的内容が明らかにされました。それは、既に関税対象となっている合計2,500億ドルに対する関税率を10月1日から30%に引き上げ、9月1日と12月15日の2回に分けて発動される関税率を10%ではなく15%にする、というものでした。
8月になってからの米中貿易戦争激化は、明らかに市場の想定を越えています。ドル円は安値更新し一時104円台まで下落、米国10年国債利回りは終値ベースで1.50%を割り込み、年初来の低水準を更新しました。一方、米国株は一気に8月のレンジの上限近くから下限近くまで下落したものの、レンジ下限はまだ割り込んでおらず、日本株も同様です。また、S&P500は金曜日に2.6%下落し、本日の時間外先物は更に0.8%ほどの下落となっていますが、本日のTOPIXは1.9%程度の下落に留まっており、米国株に対する感応度が低い状態が続いています。また、個別銘柄の動きを見ても、米中問題激化が下落材料となっているにもかかわらず、中国関連銘柄を中心とする景気敏感銘柄が下落を牽引する形になっておらず、先物主導の下落となっている点もしっくりきません。
今後、米国株、日本株ともにボックスレンジの下限を下回って下落する可能性と、レンジ内に留まる可能性と両睨みで考える必要がありますが、レンジ内に留まる可能性を否定できない以上、現状水準でカラ売りポジションを少し軽くするべきでしょう。下抜けるようなら、売り直すか、それに抵抗あるならば残りの売りポジションをキープ、レンジ内に留まりレンジの上に戻るようなら売り直し、という対応です。
ドル円に関しては、104円台で目先の底をつけた可能性が高いと感じるものの、米国株や日本株がレンジ下抜けした場合に、下落リスクがどれほどあるか判断できない状態ですので、買い増しは控え、様子見姿勢継続です。