ボラティリティは高止まりの米国株-波乱の可能性は継続
今月の米国株は、月初のトランプ大統領の3,000億ドルの中国製品に対する関税発動の表明を受け、月初めの3営業日で大幅下落した後は、レンジ内での上げ下げが続いています。S&P500でいうと、7月末の2980から8月5日には一時2822まで下げ、その後は2825-2940のボックスとなっています。ここで注目したいことが、レンジ内の動きではあるがボラティリティ(価格変動性を表す数値)は高止まっているということです。
同じレンジ内の動きであっても、1日の変動率が低く穏やかな動きによる場合と、今月のように1日の変動率が高く、レンジの上限と下限を何度も往復している場合とでは、ボラティリティは全く異なってきます。ボラティリティには2種類あり、過去の値動きから算出されるヒストリカル・ボラティリティと、オプション価格から逆算することで算出されるインプライド・ボラティリティ(現在の市場が予測する目先の価格変動性)です。
S&P500のヒストリカル・ボラティリティは、過去20営業日で見ると24.3、過去30営業日で見ると20.3で、いずれも今月の高値圏にあります。これは上昇にせよ下落にせよ、1日の変動率が高くなりやすい状態を表しています。また、インプライド・ボラティリティの総合指数であるVIX指数は昨日時点で20.3、今月はずっと警戒モードとされる15を越えて推移しており、整合的です。(VIX指数の過去5年間の平均は15程度で、一般的に15以下は平常モード、15以上は警戒モード、25以上は危機モードとされます。)
この状況はリスク・パリティ運用でのリバランスによる株売りが出やすい状況です。リスク・パリティ運用とは、株と債券のポートフォリオ運用で、ボラティリティをリスク値と見なし、リスク値が上昇(低下)したら、リスク資産である株のポジションを削減(増加)させることにより、ポートフォリオ全体のリスク値を一定に保つ、という運用手法です。運用残高は15-20兆円あるといわれています。ポジションのリバランスは月末時点でのデータに基づき月初に行なわれることが多く、9月初めの米国株大幅下落に警戒が必要でしょう。