ミョウジョウ・アセット・マネジメント株式会社の運営する会員制金融情報サイトです。

2019年8月7日のマーケット・コメント

日経平均のBPS20,000円が下値めどという議論に対する2つの反論

 

今月の日本株の下落を受けて「日経平均のBPS(1株あたり純資産)の約20,000円が下値目処だ」というレポートが、複数の証券会社から出ています。日経平均のBPSとは、日経新聞の市況欄(18面)に掲載されている日経平均のPBRを使って、「日経平均」÷「PBR」で算出される数値です。本日の紙面から算出すると、20,585.31÷1.03=19,985.74、となります。以下反論です。

 

1.日本株市場ではPBRは機能していない。

本来BPSとは企業の解散価値を表す指標で、赤字企業やバランスシートに含み損を持っていない限り、株価の下値を示すとされます。しかし、理由ははっきりしませんが、日本株市場ではBPSが株価の下値として、明らかに機能していません。その証拠が、大型株で赤字でもなく、バランスシートに含み損があるとも思えない多くの銘柄の株価が、明確にBPSを大幅に下回っています。三菱UFJファイナンシャル・グループ(PBR0.40倍)、三井住友ファイナンシャル・グループ(PBR0.47倍)、野村證券(PBR0.48倍)などの金融株のほかにも、本田技研(PBR0.54倍)、日本製鉄(PBR0.44倍)、AGC(PBR0.60倍)、三菱マテリアル(PBR0.59倍)、コニカ・ミノルタ(PBR0.71倍)など多くの大型株が挙げられます。この状況を「それらの株価は異常に割安だ」と言うことも出来なくはないですが、市場価格というものが持つ意味は重いと考えて「日本株市場ではPBRは機能していない」とするのが自然ではないでしょうか。個別銘柄の株価でPBRが機能していなければ、個別銘柄の株価の集合体である日経平均やTOPIXでもPBRは機能しないことになります。

 

2.日経新聞掲載の「日経平均のPBR」は計算方法が間違っている。

以前ロイターの記者に問題点を説明して、記事になったのが以下です。

https://jp.reuters.com/article/focus-nikkei-idJPKBN18W0FN

日経平均株価は、採用225銘柄の株価を額面調整し、その合計を除数で割って算出されています。額面調整というプロセスはありますが、単純平均です。一方、日経新聞掲載のPBRの計算方法は「日経平均採用225銘柄の時価総額合計額」÷「日経平均採用225銘柄の自己資本合計額」で算出されています。時価総額加重平均です。時価総額加重平均だと、金融や自動車など時価総額が大きくPBRが低い銘柄の影響を大きく受け、全体のPBRが低く算出されてしますのです。日経平均株価と同じ算出方法で計算される、日経平均株価のBPSは13,131.09円です。なお、TOPIXはこのような問題はなく、TOPIXのBPSは日経紙面掲載数値から算出される、1,499.23÷1.11=1,350.66、で間違いありません。