本日はファンドマネージャーの銘柄入れ替えを観測-低PBR銘柄の逆襲に注意
本日も日本株は続伸の動きとなっています。今回の上昇は、香港と英国での市場心理を好転させる出来事をきっかけに、先週木曜日から始まりました。先週木曜日は指数は大幅上昇となりましたが、その背景は明らかに先物主導の買い戻しでした。個別銘柄でも、年初来の株価の戻りが大きい半導体関連銘柄や中国関連銘柄を中心に、集中的に上昇しており、その買い手は明らかにカラ売りの買い戻しでした。先週金曜日、昨日と先物の買い戻しは続きましたが、個別銘柄の買い戻しは一巡していました。
本日の日本株市場では、個別銘柄を見ると景気敏感銘柄が幅広く買われています。一方で、内需・ディフェンシブ銘柄は幅広く売られています。また、景気敏感銘柄の中でも、先行して株価上昇してきた半導体銘柄は、本日は上昇していませんし、必ずしも景気回復を織り込む局面で変われるとは限らない金融株が上昇しています。これらの動きを総合的に考えると、本日の動向はカラ売りの買い戻しではなく、ファンドマネージャーの銘柄入れ替えだと判断されます。
数日前には大和証券から、昨日はクレディスイス証券から、「下期以降の受注回復、来期の業績回復を織り込んで機械株を買いに格上げ」というレポートが発行されたことも、銘柄入れ替えを後押しした可能性があります。また、世界的にバリュー銘柄(PBRが低位の銘柄)が買われだしている、という流れも影響しているでしょう。「積極的に株価下落から収益を得るためにカラ売りをしたが、株価が下がらないどころか上昇してきて損切りの買い戻しを入れる」という行動は短期間で終了するものですが、「業績動向が悪いためBPS(1株当たり純資産)を大きく下回る水準まで株価下落したが、株価の出遅れ感に注目して消極的な買いを入れる」という行動は短期間では終わらない可能性があります。
この先の注目点は「下期以降の受注回復、来期の業績回復」が実現するかどうかですが、その答えを市場が知るのは、早くても10月から11月にかけての7-9月期業績発表の時になります。私はそれは実現しないと予想していますが、市場ではしばらく下期以降回復期待が主流になる可能性があり、業績悪化ゆえに年初来の株価動向が冴えなかった低PBR銘柄に、断続的に買いが入る展開に警戒が必要でしょう。いわゆる問答無用の「リターン・リバーサル相場」です。なお、日経平均やTOPIXは7月高値(日経平均は21,823円、TOPIXは1,594)を抜けない、をメインシナリオとします。
ところで香港情勢と英国情勢ですが、香港では先週末も激しいデモが続いています。参加者数は数万人と、ピーク時の100万人以上からはずいぶん減りましたが、混乱は続いており、建国70周年記念式典がおこなわれる10月1日の国慶節に向けてデモの規模が拡大し、再び国際社会の注目を引く可能性があるでしょう。一方、英国情勢はジョンソン首相の形勢不利です。EU離脱の期限を10月31日から1月31日に延期する「EU離脱延期法案」は成立、ジョンソン首相は再度解散総選挙を提起するも否決されました。ジョンソン首相の公約である10月31日のEU離脱は困難な状況になりました。ただ、野党労働党はジョンソン首相がEUに離脱延期を申し出る10月17日以降の解散総選挙には応じる構えで、与党保守党が選挙勝利の場合、1月31日に再び「合意なき離脱」リスクが巡って来ることになります。