日本株、ドル円ともにしばらくはボックス相場か-米国英国のニュースのインパクトは小規模
米国株は9月半ば以降、史上最高値更新手前の水準で上値の重いもみ合いの展開が続いていましたが、昨日は今月になって初めて明確な下落となりました。下落のきっかけは、トランプ大統領がウクライナの大統領に、民主党大統領候補の筆頭で前副大統領のバイデン氏に関する調査を要請した、との疑惑が生じたことを受け、民主党が過半数を占める下院の議長であるペロシ氏がトランプ大統領の正式な弾劾調査を開始する、と発表したことでした。ただ、上院の過半数は共和党であり、実際にトランプ大統領が弾劾される可能性はほぼ無く、市場はこれを米国株の悪材料と捉えたというよりも、上値の重い展開が続いてきた後だけに、一旦売る口実が欲しかった、と解釈すべきでしょう。
一方英国では、ジョンソン首相が決めた議会の休会を最高裁が違法との判断を下し、議会は25日に再開されることになりました。英国議会はすでに9月4日に、10月31日の期限までにEUと合意が成立しない場合は、来年1月31日まで離脱期限を延期することを義務付ける「EU離脱延期法」を成立されており、ジョンソン首相が主張する「たとえ合意が無くとも10月31日にEU離脱」が実現される可能性は極めて低くなりました。ただ、9月4日以降「英国の合意なきEU離脱」は、市場のメイン・シナリオではなく、この事態は市場の好材料とはなっていません。むしろ今後、政治混乱が深刻化するようであれば、悪材料視される可能性があるでしょう。
昨日のこれら2つのニュースは、市場材料としては非常に小規模で、今後の市場動向に与える影響は極めて限定的でしょう。株、債券、為替ともに、目先しばらくはボックス相場が続きそうです。日経平均は昨日まで3営業日連続で22,000円超えで上髭を引いており、22,000円台は重いとの印象が強く、その水準がボックスの上限でしょう。下限は75日線と200日線が位置する21,200円程度を想定し、次の大きな下落波動までは重要なフシメである21,000円は割らないと思います。ドル円は、直近高値は9月18、19日の2日連続での108.48円ですが、これは週足の一目均衡表の基準線108.43円に相当し、その水準からの上値は重いとの印象が強く、ボックスの上限水準になるでしょう。下限は106円程度を想定します。8月の米国長期金利低下は過度であり、105円われまでの下値リスクは無くなったと考えます。
ボックス相場の後の展開を予想するために、まず現在の市場コンセンサスを整理します。
1.日本の企業業績は、7-9月期実績は悪いが10-12月期以降は回復に向かい、来期は大幅増益。
2.FRBは10月30日FOMCでの利下げはせず、12月11日に今年3回目の0.25%の利下げ決定。
3.米中貿易協議は、包括的合意はなされないものの、中国の米国農産物輸入と引き換えに何らかの形での部分合意がなされる可能性はある。
4.日銀の追加緩和策はマイナス金利の深堀り。
このうち3.に関しては10月に行なわれる見込みの閣僚級米中貿易協議で結論が出る話で、1.に関しても10月から11月の7-9月期業績発表と決算説明会で答えが出る話です。1.に関しては足元の株価上昇でかなり楽観シナリオを織り込んだと見られ、大きなインパクトが出るとすればネガティブ方向でしょう。3.に関しては、ポジティブ、ネガティブ両方向のインパクトが考えられますが、部分合意に対する期待感はそれほど高くなく、部分合意がなされたとしても小規模なものに留まると思われ、いずれにせよ大きなインパクトになる可能性は低いでしょう。
一方、日米に金融政策に関する2.と4.については、12月11日のFOMC、12月19日の日銀決定会合までは結論が出ない話であり、債券相場、ドル円ともにそれまでボックス相場が継続する可能性が高いでしょう。
結論としては、従来の見方どおり、「7-9月期業績発表と決算説明会で下期回復に懸念が生じ、日本株はフシメの21,000円を明確に下回る下落波動となる」とします。米国株も下落すると思いますが、日本株に比べると下落率は小幅になるでしょう。米国10年国債利回りは低下が予想されるものの、9月初めにあった1.50%を割り込む水準まで低下するとは思えず、ドル円も105円を割れる水準まで下落するとは思えません。