FRB高官発言が示唆する9月18日FOMCでの0.25%の利下げ
昨日、FOMCで投票権を持つ2人のFRB高官が正反対の発言を行ないました。まず、ブラード・セントルイス連銀総裁ですが「FRBは、市場の期待と世界的な貿易戦争の悪影響に先んじるために、次回会合で0.50%の利下げを行なうべきだ」と発言しました。昨日は米国ISM製造業指数(景況感指数)が3年ぶりに50を下回り「現在の経済状況は世界的衝撃を意味するものであり、それはFRBが次回会合で積極的な行動を取ることを正当化する」「現在の政策金利は高すぎ、この状況では市場のシグナルを優先すべきだ」としました。ブラード総裁は、7月初めにいち早く7月31日FOMCで0.25%の予防的利下げをすべきとの考えを表明した、いわゆるハト派の代表です。
一方、ローゼングレン・ボストン連銀総裁は「米国経済はリスクが明らかに高まっているものの、依然として比較的堅調なままであり、次回会合で利下げする必要性を納得していない」と発言しました。「世界的な状況が更に悪化しない限り、米国経済は2%程度の成長を続ける可能性が高く、FRBが直ちに政策行動(利下げ)を取る必要はない」とされました。ローゼングレン総裁は7月31日FOMCで、ジョージ・カンザスシティ連銀総裁とともに、利下げに反対票を投じた、いわゆるタカ派の代表です。
パウエルFRB議長は、昨年末までは「中立からややタカ派より」でしたが、12月の米国株急落や米中貿易戦争激化を受けて、現在では「中立からややハト派より」に変化しています。トランプ政権が3,000億ドルの中国製品に対する関税発動を表明したのは、前回FOMC(7月31日)の後の8月1日であったことを踏まえると、貿易戦争による米国経済の先行き不透明感は明らかに前回会合時よりも高まっており、パウエル議長は追加予防利下げは十分正当化される、と考えていると思われます。
ただ、昨日の2人のFRB高官発言は、1人が「0.50%の利下げ」を主張し、もう1人は「利下げ見送り」を主張していることに象徴されるように、FOMC内で意見の食い違いが相当あり、ハト派タカ派ともどちらかに傾斜した政策決定は困難だと思われます。パウエル議長は両者の中間、つまり「0.25%の利下げ」に向けてFOMC内部の調整を図ると思われます。
FFレート先物から見る、利下げに対する市場コンセンサスは「9月と12月にそれぞれ0.25%の利下げ。場合によれば10月も0.25%の利下げがあり得る」というものです。つまり、9月17日会合での0.25%の利下げ決定自体は市場予想通りですが、市場は残る年内の利下げに関する文言に注目し「高い確率で年内もう1回(今年合計3回)の利下げがある」というニュアンスなら市場反応は中立、「年内は継続的な利下げ(10月、12月とも利下げ)の可能性が高い」というニュアンスならハト派寄りの動き、「7月および9月の利下げはあくまでも予防的利下げで、利下げサイクルへの転換ではなく金融政策正常化のサイクルの途上での調整」という7月31日FOMCで使われた文言に変化無い様であればタカ派寄りの動きとなることが想定されます。米国債券はハト派寄りであれば買われ(金利低下)、タカ派よりであれば売られる(金利上昇)という素直な反応になると思われますが、米国株はハト派タカ派いずれの方向に振れても買い材料とは捉えられず、ハト派寄りであれば将来の業績悪化懸念から下落、タカ派寄りであればFRBの市場との対話失敗と捉え大幅下落となる可能性が高いと思います。