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2020年1月14日のマーケット・コメント

米中第1段階貿易合意の内容は?

 

米国時間の明日(15日)午前11時30分に、ホワイトハウスで米中第1段階貿易合意の調印式が行なわれる、と報道されています。すでに中国側の貿易交渉責任者の劉鶴副首相はすでに米国入りしています。市場では、今回の第1段階合意に第2段階に繋がるような内容が含まれているかどうかに注目しており、かなり楽観的な展開を期待しているようです。

 

しかし、中国側が米国入りし、調印式の日時も場所も決まっているにもかかわらず、米中第1段階貿易合意の内容が、いまだに一切中国側から発表されないことに、私は懸念を感じます。米国側からの発表を元に、合意内容を整理すると

「中国が

  • 知的財産権の保護、知的財産権侵害の防止策を講じる
  • 外国企業に対する技術移転の強要を今後行わない
  • 豚肉と大豆を中心に米国産農産物を1年間で500億ドル購入する
  • 中国国内の金融サービス事業を米国企業に開放する
  • 為替操作を禁止し、市場の透明性を確保する
  • 米国からの輸入額を、2年後には2,000億ドル増加させる(現在の2倍以上)

その見返りとして、米国は

1.12月15日に予定されていた1,600億ドルに対する追加制裁関税の発動を見送る

2.9月1日から発動されている1,400億ドルに対する関税率を15%から7.5%に引き下げる(ただし実行は合意文書署名後)

そして米中両国は、合意内容が正しく実行されているかを、相互に査定・評価を行い、問題が見受けられる場合、制裁を行う」

というものでした。

 

中国側の約束のうち、3.は単なる商取引なので問題なく、5.の布石として米国は中国を為替操作国リストから削除しました。ただ、知的財産権に関わる1.2.については、具体的な対策にどれほど踏み込まれるのか疑問であり、4.も同様です。6.も途中段階でどのような検証が行なわれるのか明確にならなければ、単なる努力目標で終わります。私の懸念は、3.と5.以外は、総論では合意だが具体策に関しては第2段階で決める、という内容になることです。つまり「合意成立」という米中両首脳にとって欲しい政治成果を得られる代わりに、中国側は必要なモノ(豚肉と大豆)を買う以外に何も具体的に失うものはなく、米国は約束どおり1,400億ドルに対する関税率7.5%を失い、総合的にみれば合意内容は米国の敗北に終わるということです。

 

現在の評価は「米国が中国側の譲歩を最大限引き出した」というものなので、上記のような結果になった場合、米国議会は黙っていないでしょう。米国の対中公共政策は、超党的政策であり「合意という政治成果が欲しいあまりに、トランプ大統領は交渉に負けた」ということになれば、大統領選挙に向けた共和党内の求心力低下も招きかねません。そうなればトランプ大統領は機会を捉えて再び中国攻撃に出ることになり、市場波乱要因となります。まずは日本時間16日に明らかになるであろう、米中第1段階貿易合意の米中両国の正式発表内容に注目です。