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2020年1月15日のマーケット・コメント

米中第1段階貿易合意の内容は?(2)

 

昨日、米国で「米国が現在中国製品に課している関税は、11月の大統領選挙後まで維持される可能性が高い」との報道がありました。さらにムニューシン米財務長官は「米国は対中関税を第2段階の書名後に見直す」と発言しました。これは昨日のコメントでご説明した「9月1日から発動されている1,400億ドルに対する関税率を15%から7.5%に引き下げる(ただし実行は合意文書署名後)」が行なわれないことを示唆します。

 

この背景はおそらく、米国産農産物(豚肉と大豆)の大量購入と為替操作の禁止以外の知的財産権保護などに関する合意項目が、中国側にとって事実上の「問題先送り」にすぎないことから、米国が成果を検証できるまでは関税率引き下げという見返りを与えるべきではない、という米国側の判断があるのでしょう。

 

昨日のコメントでは「中国が知的財産権保護などの問題を事実上先送りするにもかかわらず、米国が関税率引き下げを行なったら、総合的にみれば合意内容は米国の敗北に終わる」とご説明しましたが、上記を踏まえると「米中両国とも合意という政治成果を手にするが、合意内容はほとんど中身のない物になり、問題解決は先送りされる」ということになりそうです。つまり、「第1段階の合意は政治セレモニーにすぎず、内容は希薄で問題は先送り。米中ともに勝者でも敗者でもなく、今後も協議継続。」ということになりそうです。

 

もし第1段階合意がそのような内容であれば、「今回の第1段階合意に第2段階に繋がるような内容が含まれているかどうかに注目」という市場の期待値と比べると、かなりのトーンダウンでしょう。リスク・オフ反応の要因とまではならないと思いますが、リスク・オン後退の要因にはなるでしょう。ドル円は110円、日経平均は24,000円をタッチしており、達成感が出やすい状況でもあります。

 

追記:後に別の報道で「9月1日から発動されている1,400億ドルに対する関税率は15%から7.5%に引き下げられるが、残る関税(1,400億ドルに対する7.5%と2,500億ドルに対する25%)の引き下げは第2段階合意後の検討」と報じられました。だとすると、中国は米国から豚肉などを購入する(商取引の)見返りに7.5%の関税率引き下げを獲得することになり、米国にやや不利な内容となります。市場にとっては「第1段階合意内容は想定通りだが、第2段階合意に繋がる内容はない」となり、材料出尽くしでリスク・オン後退でしょう。