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2020年1月28日のマーケット・コメント

コロナウィルスによる市場動向をSARSの時を参考にすることは危険

 

新型コロナウィルス肺炎の感染拡大が続き、世界的に市場はリスクオフ反応となっています。今後の展開を予想するにあたり、2003年のSARSの時を参考にすると、というレポートが散見されます。以下はある証券会社のストラテジストのレポートの引用です。

【SARSの感染者数が急加速したのは2003年3〜5月である。その間の株式市場は概ね横ばい圏だった。WHOによるSARSの終息宣言は2003年7月だったが、株式市場がボトムを付けたのは、2003年4月28日にWHO幹部が「香港、シンガポール、ベトナム、カナダでは山を越えた」と発言したことがきっかけである。その後もグローバルでは感染者数が増加したものの、株式市場はリバウンドを続け、6月に入って感染者数が横ばいに転じたことを機に大幅上昇した。株式市場にとって重要なのは、事態が完全に収束するか否かよりも、「被害のモメンタム鈍化」を察知できるか否かである。当時のパターンでは、感染者数が急加速してからの株式市場は「1ヵ月目:下落、2ヵ月目:底入れ、3ヵ月目:大幅上昇」だった。】

 

市場への直接的悪影響が収束する時期が「被害のモメンタム鈍化」によって決まる、という点は賛同します。感染の拡大と収束の時期をSARSの時と比較することも、意味があると考えます。しかし、今後の株式市場の動向を、2003年のSARSの時と比較することは不適切だと考えます。理由は、それまでの株式市場の動向があまりにも異なるからです。

 

2003年までの株式市場動向を振り返ると、日経平均は2000年4月に20,833円の高値を付け、その後はいわゆるネットバブル崩壊や9.11テロなどで下落が続き、2002年末には8,579円となっていました。その後、SARS騒ぎの中2003年4月に7,604円で大底を付け、2007年2月の18,300円までの上昇相場が始まったのです。つまりSARS騒ぎは、大きな下落相場の終盤に起こりました。SARS騒ぎは大底形成を多少遅らせたかもしれませんが、SARS騒ぎが無かったとしても大底は形成されていたであろう状況でした。

 

今回はこれまでの株式市場動向が、まったく異なります。2018年10-12月の調整の後、2019年は反発し、現在は高値圏にあります。しかも、米中対立、イラン問題、2019年度減益見通しなど、悪材料多数の中にもかかわらず、です。今回、株式市場の下落が始まるきっかけはコロナウィルス騒ぎですが、「高値圏での下落」という現象を受けて、すでにこれまでも存在していた様々な悪材料を理由に、株を売却する(ポジションを減らす)という動きが、ウィルス騒ぎの収束とは関係なく継続する可能性があるでしょう。

 

もちろん、ウィルス騒ぎの影響による企業業績下押しも今後各所で顕在化し、2020年度の業績回復見通しに暗雲が立ち込めてくる、という景況感や企業業績見通しの下方修正も株価下落要因と語られる様になるでしょう。SARSの時との比較を真に受けて、ウィルス騒ぎの早期収束による市場急反発を期待して、買い向かうことは非常に危険だと思われます。