米国長期金利上昇
昨日の米国市場では、トランプ大統領の早期退院観測などから米国株は大幅反発し、NYダウ、S&P500、NASDAQともに先週金曜日の下落を埋め、25日線を上回ってきました。残る節目は9月16日の戻り高値の、NYダウで28,365(昨日終値28,149)、S&P500で3,429(同3,409)、NASDAQは戻り高値は10月1日の11,344(同11,332)です。
ただ気になるのは、昨日の米国市場で米国長期金利が大きく上昇したことです。米国10年国債で見ると、金曜日の引け時点では利回りは0.70%でしたが、昨日引け時点では0.78%に上昇しました。上昇分の0.08%の内訳は、期待インフレ率が0.06%、実質金利が0.02%となっており、上昇の大部分が期待インフレ率の上昇でした。日中の動きを見ると、何かのニュースフローに反応したわけではなく、ほぼ一貫して一日中金利上昇しており不可解です。
前回に米国10年国債利回りが、心理的なフシメとされる0.75%を上回ったのは6月5日でした。6月10日のFOMCで、現行の超緩和政策が少なくとも2022年末まで維持される見通しを示したことで、米国10年国債利回りは低下しましたが、6月11日には米国株は急落しました。NYダウは1,862ドル(6.9%安)、S&P500は5.9%安、NASDAQは5.3%安と大幅下落でした。
一般的にバリュー株とグロース株の相対比較において、金利低下はグロース株優位、金利上昇はバリュー株優位とされます。この背景は、
1.金利低下はグロース株のより高いバリュエーションを正当化する一方、金利低下の背景には景況感悪化がありバリュー株(景気敏感株)には業績懸念がある。
2.金利上昇の背景には景況感改善がありバリュー株には業績回復期待がある一方、金利上昇はグロース株のバリュエーション切り下げ要因となる。
ということです。
昨日の金利上昇には、6月5日当時と同様に、景況感改善という背景は見受けられません。つまり、金利上昇はグロース株のバリュエーション切り下げ要因とはなりますが、景況感改善という背景がない以上、バリュー株の業績回復期待は存在しません。むしろバリュー株は有利子負債が多い傾向があり、金利上昇は借り入れコストの上昇につながるため悪材料です。昨日の金利上昇は、グロース株にとってもバリュー株にとっても悪材料であり、米国株の全面安に警戒が必要です。(9月17日付コメント参照)