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2020年3月17日のマーケット・コメント

日銀ETF買い入れ枠倍増

 

昨日、日銀は18、19日に予定されていた政策決定会合を昨日に緊急前倒しして、現在年間6兆円のETF買い入れ枠を「当面の間」年間12兆円に増額することを決定しました。決定直後は株価は上昇しましたが、まもなく下落に転じました。米国でも、FRBの緊急利下げを受けた昨日の米国株は、1987年のブラックマンデー以来の下落率となりました。日本では「それくらいしか日銀にできることはないのか」、米国では「FRBがそこまでしなければならないほど状況はひどいのか」という反応です。

 

日銀のETF買い入れに関してですが、3月10日付コメントで日銀保有ETFの現在の平均簿価は、日経平均換算で約19,800円であることをご紹介しました。残高は簿価ベースで28.2兆円です。つまり、現状の日経平均16,500円水準では、評価損率は17%、金額にすると4.8兆円の評価損が発生しています。簿価割れの水準で買い入れペースを倍増するという行為は、ナンピン買い(簿価下げのための買い)と言えば聞こえはいいですが、株価下落が継続した場合、評価損は膨れ上がっていきます。

 

そもそもETF買い入れによる金融市場への効果について、「株式市場のリスクプレミアムに働きかける(低下させる)」という日銀の説明は、意味不明です。効果として唯一考えられるのは、市場下落スピードをほんの少しだけ緩やかにするということくらいです。1日の買い入れ額が730億円だったころに、複数の証券会社がETF買い入れの市場インパクトを分析するレポートを出していましたが、結論は1日あたり日経平均換算で10円程度というものでした。つまりETF買い入れがなければ500円下落していたところ、1日1026億円のETF買い入れが入れば480円の下落、買い入れ額を倍増させれば460円の下落ですむ、という話です。

 

たったそれだけの効果を得るために、兆円単位の評価損発生というリスクを取って行うことが正当化されるとは思えません。早晩、野党議員からこの点糾弾され、安倍内閣の支持率低下に繋がる可能性があるでしょう。「中央銀行が自国の民間企業の株を買い続けている」というだけで、外人投資家にはネガティブなのに、政権の安定性が損なわれるとなれば、日本株は積極的な売り対象になるでしょう。