G7は国際協調との報道だが・・・
3月18日のFOMCでFRBは緊急利下げに踏み切るとの観測や、G7は国際協調的政策を取るとの報道を受けて、昨日の米国株は4%を超える大幅上昇となりました。これを受けて本日の日本株は大幅上昇で始まりましたが、徐々に上げ幅を縮小する動きとなっています。この背景にはドル円が下落し再び108円を割り込んだことに加え、日本企業全体が今回のウィルス騒ぎから受ける業績への悪影響は、米国企業全体よりもはるかに大きくなりそうだ、という見通しがあると思われます。
G7の国際協調的政策ですが、考えられるのは金融政策と財政政策です。まず金融政策ですが、まだ利下げ余地があるFRBやBOE(英国中央銀行)は利下げという対応が可能ですが、すでに政策金利がマイナスになっている日銀やECBは、マイナス金利の深堀はできないでしょう。日銀が昨日今日2日連続で5,000億円の資金供給(国債買い現先オペ)を行なっていますが、日銀とECBはこのような対応しか取れないでしょう。利下げのできる米国や英国でも、利下げの効果は実体経済には現れず、せいぜい「中央銀行は市場に配慮している」というアピールに留まります。
財政出動も同様です。インフラ投資などの公共投資も減税も、現在の状況では相乗効果や波及効果は見込めず、実体経済への効果は限定的でしょう。むしろ現在の状況では乗数効果は1以下になる可能性が高いでしょう。(乗数効果:政府支出の1に対する実体経済への効果。1を下回るのであれば政府支出を行なう意味がない。)
通常の景気後退期と今回の大きな違いは、景気後退の背景が信用収縮や景気後退による需要減衰ではなく、ウィルス感染を恐れ自らが選択した行動にある、ということです。つまり、「金利が高い」「景気後退により需給ギャップが拡大している」などの障害により、望まない景気後退になっているのではなく、「ウィルス感染防止」を理由に自発的に行動し、結果として景気後退となっています。つまり実質的には「望んだ行動の結果としての景気後退」であり、今回の障害は「ウィルス感染」です。
G7各国の政策立案担当者もこの点は理解しているはずなので、G7の国際協調的政策は「みんなで頑張ってウィルス騒ぎに耐えましょう」という領域を出ないと予想されます。過度な期待は禁物です。市場が底打ち反転するのは、「今回のウィルス騒ぎに経済的被害が金額化されるとき(悪材料を見切ったとき)」だと思われますが、それにはまだしばらく時間がかかるでしょう。日米ともに昨日ご説明した3分の1戻しは達成し、いつ下落の第2波動が始まってもおかしくない状況になりました。「戻りは売り」という姿勢を堅持しましょう。