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2020年4月10日のマーケット・コメント

ついにFRBは民間企業への直接資金供給を決定-これ以上はない究極策

 

昨日米FRBは、合計2.3兆ドルの追加経済支援策を発表しました。内容としては中小企業や州、地方政府の支援向け融資で、手法としては低格付け債券(ジャンク債券)、ローン担保証券(CLO)、商業用不動産ローン担保証券(CMBS)といった、これまでは買い入れ対象にはなっていなかった高リスク証券の買い入れです。これは、従来の国債の利回り曲線を制御するという中央銀行の政策枠組みを超越し、信用スプレッド(信用リスクの高さによる金利上乗せ分)をも制御するという究極の政策です。形を変えた「ヘリコプター・マネー(ばら撒き政策)」と言えます。

 

ただ残念ながら、この究極の「金融政策と財政政策の融合策」も現在の状況では「延命効果」でしかなく「景気浮揚効果」はありません。ウィルス感染拡大中は言うまでもなく、感染収束後も米国に大量のゾンビ企業(本来なら倒産するはずだが政策によって倒産を免れている企業)が生まれるだけです。すでに大量のゾンビ企業を抱える中国の状況を見ても、ゾンビ企業の経済活動が景気全体の浮揚に寄与しないことは自明でしょう。

 

昨日の米国市場の反応は、ジャンク債大幅上昇、米国株小幅上昇、米国債券小幅上昇(金利小幅低下)でした。今回買い入れ対象に追加されたジャンク債が大幅上昇したのは当然ですが、金利が小幅低下したことが「今回の政策に景気浮揚効果は無い」と市場が判断している証拠です。

 

米国株ですが、NYダウもS&P500も、昨日でちょうど半値戻りを達成しました。下落トレンドの途中の戻りとしては、いっぱいいっぱいの水準といえます。来週以降は米国企業の業績発表が始まりますので、あらためて業績が想定以上に悪化することに注目され、ピークアウトから下落に転じる可能性が高いと思われます。明確な下落が始まったら、配分変更売りが下落を加速させる見込みです。中途半端な水準での押し目買いは厳に慎みましょう。

 

ところで今日は4月限りオプションのSQでしたが、SQ値は19,577.48円でした。日中一度もこの水準を上回らなかったため、いわゆる「幻のSQ値」となりました。経験則で言えば相場の転換点のサインです。