今はリーマンショック時のどの時期にあるのか
今回の新型コロナウィルス感染拡大による株価大幅下落は、「リーマンショック以来の」と説明されることをよく目にします。今回の株価大幅下落とリーマンショック時とは、「金融危機(信用収縮)」と「実体経済悪化」の因果関係が逆であり、今回は金融政策や財政政策は効果がないことは、3月16日付けや4月10日付けのコメントでご説明しました。しかし背景は違っても「株式市場のリスクが増加したことを受けて投資家が株式削減に動く」という点では共通ですので、リーマンショック時のプロセスを振り返り、現在がそのプロセスのどの時期に当たるのか、を考えます。
3月19日に明らかに株式ロング・ショート戦略ポジションの大規模解消が行なわれていることを受けて書いたコメントで、
「リーマンショック時を振り返ると、まず2007年8月10月11月にこの「ロング・ショートのアンワインド(ポジション・クローズ)」が主導する下落(第1段階)、次に2008年1月3月に「資産配分変更に伴う、広く保有されている優良株」主導の下落(第2段階)、2008年6月以降は「景気悪化を織り込み、景気敏感株全般」主導の下落(第3段階)、最後の2008年10月は「爬行色なく全銘柄」主導の大幅下落(第4段階)、という変遷でした。」
と2007年から2008年のプロセスを復習しました。
まず、現在の状況の大前提として「現在はまだほとんどの中長期資金の運用者が、株削減という行動を取っておらず、その行動を取るタイミングを計っている」という状況だということがあります。(この点のご説明は3月31日付けのコメントをご参照ください。)つまり、上記の第1段階は終了したが、第2段階はまだこれから、ということです。2007年からの下落波動を詳しく振り返ると、2007年8月は「先物主導+ロング・ショートのアンワインド」、2007年10-11月は「先物主導」、2007年12月-2008年1月は「広く保有されている優良株主導」、2008年3月は「先物主導+財務リスクが高い銘柄主導」となっていました。
結論としては、「現在は2007年12月の時期に符合する」です。今年2月から3月の下落では「先物主導」と「ロング・ショートのアンワインド」が断続的に混合した内容でした。これを前回のプロセスに当てはめれば、2007年8月の下落波動と2007年10-11月の下落波動が同時に起こった、というイメージになります。2007年11月から12月は、その前の下げのちょうど半値まで戻り、その後の下落波動が始まっています。その後の下落波動は、2007年12月-2008年1月と2008年3月の2波動あり、ベアスターンズの破綻で6月まで3ヶ月の戻り相場に続きました。
それを今回に当てはめれば、「早晩、広く保有されている優良株主導の下落が始まり、下落2波動を経て一旦底打ち」となります。具体的なイメージとしては、これまでのご説明と変わりません。つまり「目先の下値目処は16,500円程度で、その後17,500円程度まで戻ってから15,000円程度まで下落。ウィルス感染拡大ピークアウト観測で一旦底打ち。」です。
2008年は3-6月に戻り相場があってから、問題は全然解決されていないことに市場が気づき始め、リーマンが経営破たんした9月まで目立った反発局面なく下落が続き、10月には下落加速から乱高下となりました。今回でイメージされるのは「ウィルス感染の拡大はピークアウトしたにもかかわらず、各種政策は景気浮揚効果を発揮せず、経済状況はV字回復どころか低迷が続く」と市場が気づき始めて、あらためて下落が始まる、という状況です。15,000円程度から17,500円程度まで戻った後に下落基調に転じ、15,000円を明確に下抜けてから下落が加速して、最終的には少なくとも12,000円、ウィルスの第2次感染拡大が始まるなど状況次第では10,000円割れまでの下落もありえる、と考えられます。(下値目処の算出根拠に関しては3月16日付けコメントをご参照ください)