中長期投資家は明確な下落を見てから行動開始
昨日の日本株は先物主導で大幅上昇となりました。売買代金は低調だったことから、おそらくCTA(トレンドフォロー型の自動運用)の買い戻しだったと思われます。昨日の日本時間から米国株時間外先物は上昇していましたが、昨日の米国株は織り込み通りの上昇となりました。NYダウもS&P500も半値戻り達成です。
ただ、減産合意を受けても原油価格は再び20ドルトライの水準まで下落、米国債券は堅調(金利低位安定)と、将来の景気回復を織り込んだ動きにはなっていません。米国株も売買代金は低調だったことから、昨日の日本株と同様に先物の買い戻し主導たったと考えられます。
これまで「4月は資産配分変更に伴う株削減の動きが出る」とご説明してきました。その見方に変化はありませんが、実際にはまだそのような動きは出ていません。そこで、あらためて中長期資金運用者の行動パターンをご説明します。これまでご説明してきた通り、彼らにとって最も重要なことは「投資行動についての説明責任を果たすこと」であり、彼らにとって最大のリスクは「運用成績が同業他社と比べて目立って悪い結果となり、顧客を失うこと」です。それを回避するために彼らが取る行動は「同業他社と同じような時期に同じような行動を取ること」です。運用成績が悪くても、同業他社と同じように悪いのであれば、顧客を失うことにはならないからです。
現在の状況は誰の目にも明らかに「ウィルス感染拡大の影響で、大規模な景気後退が起こる」という状況で、株などのリスク資産を削減する理由は明解に説明できます。つまり説明責任は容易に果たせます。問題は「同業他社と同じような時期に同じような行動を取ること」という点です。米国株は3月の安値からの戻りが続いています。もし、先鞭を切って株削減を行なっても更に戻りが続いた場合、運用成績は同業他社よりも目立って劣ることになります。そのリスクを回避するためには、株価が明確に下落を始め、高い確率で同業他社も株削減に動くというタイミングで株削減に動く、という行動になります。
「明確な下落」の具体的なイメージですが「直近高値から5%程度の下落」です。その下落は中長期資金ではなく、ヘッジファンドなどの短期資金が作り出すわけですが、何らかのきっかけがあればわかりやすいです。目先きっかけになりそうなものは、企業業績発表、トランプ大統領が近日中に出すと言及している経済回復ガイドライン、原油価格の更なる下落などが挙げられます。ただ、きっかけは何でも良く、もっと言うときっかけがなくても良く、「直近高値から5%程度の下落」という動きが出るかが重要です。
総括すると「直近高値から5%程度の下落になれば、15%程度の下落まで拡大する。5%程度の下落となるまでは、戻り高値圏でのもみ合いないしは緩やかな戻りが継続する」ということになります。