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2020年4月21日のマーケット・コメント

原油価格が「マイナス40ドル」!

 

昨日のNY原油市場で、前代未聞の値動きが起こりました。WTI5月限り先物の価格が急落し、0ドルを割り込むと一気にマイナス40ドルまで下落しました。1バレル当たりマイナス40ドルということは、売り手は40ドル払うから買い手に引き取ってほしい、ということであり、原油が産業廃棄物の様に「処理に費用がかかるもの」として取引されました。原油先物取引が始まった1983年以来、初めての出来事だそうです。この背景は、世界的なウィルス感染拡大により原油需要が一気に減少し、原油の貯蔵施設が不足してきていることがあります。5月限り先物の最終売買日は4月21日なので、最終売買日が迫り売り手が投げ売った、ということです。

 

なお、6月限り先物は21ドル程度、7月限り先物は27ドル程度、12月限り先物は33ドル程度となっていますので、市場では貯蔵施設不足は1ヶ月程度で解消されると織り込まれています。ただ、貯蔵施設の大規模拡張には1ヶ月以上の時間がかかります。また、1ヶ月でウィルスによる需要減少が戻るとは想定できないため、供給が減少しない限り6月限り先物の最終売買日の5月19日に向けて、5月限りと同様の値動きが起こる可能性があります。

 

本来であれば、原油価格の大幅下落に耐えられなくなったシェールオイル業者が破綻し、供給能力が強制的に削減されて需給のバランスが取れる様になります。ただ今回の場合は、FRBがジャンク債まで買い入れ対象としているため、シェールオイル業者の破綻が進みにくくなっています。また原油生産は、一旦稼動を止めると再開のためにかなりの費用がかかるため、ほとんどの業者は赤字状態でも生産を継続すると思われます。まさに「囚人のジレンマ」状態です。

 

トランプ大統領は原油価格下落に対抗する措置として、戦略的備蓄を最大7,500万バレル積み増すことと、サウジアラビアからの原油輸入停止の可能性を打ち出しました。戦略的備蓄の積み増しは需要となりますが、米国の1日当たりの原油産出量が1,300万バレル程度であることを考えると「焼け石に水」程度の効果しか期待できません。またサウジアラビアからの原油輸入停止は、米国以外の地域でサウジアラビア産原油がだぶつくことになり、WTI(West Texas Intermediate=米テキサス州産の原油)の価格だけを人為的に下支えしても、世界の原油需給を反映した価格でなくなれば、WTIの「原油価格としての指標性」が失われるだけでしょう。

 

原油価格の下落は、実体経済が悪化していることの象徴の一つですが、今後は企業業績悪化が顕在化していくことにより、株式市場も時間の問題で再び大幅な下落が始まるでしょう。