ミョウジョウ・アセット・マネジメント株式会社の運営する会員制金融情報サイトです。

2020年4月27日のマーケット・コメント

原油連動ETFに関して

 

ご存知のように原油価格は下落傾向が続いており、4月20日の米国市場ではWTI先物5月限りが史上初のマイナス価格で取引されました。その後も原油価格の戻りは鈍い状況が続いています。「10ドル台の原油価格は、向こう数ヶ月という時間軸ではわからないが、向こう数年という時間軸では絶対に安い。中長期の観点では今は原油の買い場だ。」と考える人が多くなっても不思議はありません。問題はその方法です。

 

原油連動商品として、東証に上場しているETFが1671と1699、ETNが2038があります。原油価格が大幅下落したことを受けて、これらの信用買い残は激増しており、多くの個人投資家が原油に対する(おそらく中長期の)投資対象としてこれらを買ったことが伺えます。しかしこれらは投資対象としては不適切です。

以下、その点を説明した取引所のHPです。

https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/risk/03.html

 

原油に限らず、原資産を保有するのではなく先物を使っているETFやETNは例外なく「期近限月の期日が近づくと、期近限月を売って期先限月を買います。これをロールオーバーといいます。具体的に現在のWTI先物の価格を限月ごとに見ますと、以下の様になっています。

6月限り:15.68ドル

7月限り:20.22ドル

8月限り:23.12ドル

9月限り:25.12ドル

10月限り:26.21ドル

11月限り:27.25ドル

12月限り:28.09ドル

このように期日まで期間があるものほど高くなっている状態を「コンタンゴ」といいます。なお、逆の状態を「バックワーデーション」といいます。

 

ETFやETNの運用会社は、6月限りの期日が近づくと6月限りを売って、7月限りを買います。つまり、15.68ドルで売って20.22ドルで買います。同じものを安く売って高く買い直すわけですから、この行為が経済的にマイナスだということはご理解いただけるでしょう。原油価格の動向に関わらず、ロールオーバーをするごとに、ETFやETNの価格は減価します。(現在は複数の限月を混合させているようなので、上記のように単純ではありませんが、原理は同じです。)

 

もちろん、この期近から期先へのカーブは固定ではなく、市場がどの程度の「先高感」「先安感」を織り込むかによって変化します。ただ原油価格の大幅下落の最大の要因である「ウィルス感染拡大による原油需要の大幅減少」の解決には時間がかかるため、市場は当面の間は「先高感」を織り込んだままの状態が続くでしょう。つまり、原油価格そのものが目先下落しなくても、ロールオーバーするごとにETFやETNの減価(価格下落)は継続します。

 

このことを逆手にとって収益化する方法は「カラ売り」です。2038はカラ売りできませんが、1671と1699は日証金の信用取引でカラ売りができます。短期的には原油価格に連動しますので、「原油価格が反発した際に、1671や1699を信用で売り立てて、あとは放置して減価するのを待つ」という手法は、地味ですがリスク=リターンの効率は非常に良い手法です。