「オーバーシュート」なのか「レンジシフト」なのか
先週金曜日に発表された米雇用統計は、非農業部門雇用者変化が2,050万人減(事前予想2,200万人減)、失業率は14.7%(同16.0%)と前代未聞の悪化でしたが、事前予想よりもましだったことを受けて米国株は上昇しました。それを受けて本日の日本株は続伸となり、日経平均は一時20,500円超えまで上昇しました。ただ、現物株も先物も出来高は少ないままで、あいかわらず中長期投資家は動いておらず短期投資家中心の売買であることが伺えます。
これまでもご説明してきましたが、短期投資家は一定のレンジの中で短期的に値幅を取ることが目的です。つまり、短期投資家は上昇にしても下落にしても継続的な動き(トレンド)を作り出すことはできません。トレンドを作ることができるのは中長期投資家です。したがって、依然として中長期投資家が動いている様子がない現在の株式市場は、短期投資家主導のレンジ相場が継続している状態だといえます。
ただ、日経平均はレンジの上値目処の20,000円を本日明確に上回っていますので、表題の2つの可能性があります。なお、このところ日経平均はNYダウの4,000下でほぼパラレルに動いており、日本株に主体性はありませんので、目先は「日本株の動き=米国株の動き」と考えていいでしょう。これまでの中心レンジは、日経平均が19,000-20,000円、NYダウが23,000-24,000ドルでした。
現在の動きがオーバーシュートだとすれば、早晩なんらかの悪材料をきっかけに元のレンジに戻る動きとなります。一方、レンジシフトだとすれば、日経平均で19,000-20,000円、NYダウで23,000-24,000ドルのレンジが上方シフトし、例えば19,500-20,500円、23,500-24,500ドルに変わる、ということになります。このどちらなのかの判断は今後の値動きを見ていく必要がありますが、いずれにせよ現在の水準からの上値余地は限定的だといえるでしょう。
中長期投資家の次のアクションが「買い」ではなく「売り」だという見方に変化はありません。つまり最終的にレンジを抜けるのは、上ではなく下だということです。2月終わりから3月安値までの下落があまりにも早かったため、中長期投資家のほとんどが株式の配分削減を行なえず、株の配分比率を増やすリスク許容度を持っていないと考えられることが、その様に考える理由です。