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2020年5月14日のマーケット・コメント

V字回復シナリオのL字への修正が始まったか

 

米国株は2日連続で大幅下落となりました。一昨日の下落の背景は米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長が、米国議会の証言で「ウィルス感染の影響はそう簡単になくならず、拙速な経済活動再開は事態を後退させる」と発言したことで、昨日の下落の背景は米FRBのパウエル議長が講演で「政策対応があっても本格的景気回復には時間がかかり、家計や企業に長期的な打撃が与えられる恐れがある」と発言したことでした。いずれも経済のV字回復シナリオを否定する内容でした。

 

5月8日付のコメントにも書きましたが、市場の織り込みは「4-6月期の景気は最悪だが、7-9月期から徐々に回復軌道に乗り、10-12月期移行は回復が加速」といういわゆるV字回復シナリオでした。ただこのシナリオには根拠はなく願望に近いものであることは、少し冷静に状況判断すれば誰にでもわかることです。そのことが感染症の重鎮であるファウチ所長と金融政策の重鎮であるパウエル議長の発言で確認され、市場は「過度な回復期待を持って株を買い上がるのは危険だ」との織り込みになった印象です。

 

ただ、本格的な下落波動を起こすまでには、まだ至っていないと思われます。それが起こるには、ウィルス感染の再加速、すなわち感染第2波の到来が必要でしょう。各専門家は高い確率での第2波の到来を予想しており、おそらくそれは実際に起こると思われます。その時期は7-8月頃と予想されています。株式市場の本格下落もその時期になるでしょう。それまではレンジの動きが継続でしょう。

 

世界的に株式市場がこれまでのレンジの上限をやや上回ってきたことを受けて、前回のコメントで「オーバーシュートなのかレンジシフトなのか」見極めが必要であることをご説明しました。その後、米国株を初め主要株式市場は元のレンジの中に戻る「オーバーシュート」の動きとなっています。景気回復に対する過度な期待が修正されているとすれば、当然の動きと言えます。

 

ただ摩訶不思議なのが日本株です。一昨日昨日の2日間でNYダウは約1,000ドル下落したにもかかわらず、日経平均はこの2日間で200円ほどしか下落していません。欧米株式がレンジの下限近くまで下落しているにもかかわらず、日経平均はいまだにそれまでのレンジの上限である20,000円よりも上にいます。その結果、NYダウと日経平均の差は一気に縮小しました。日本株だけが下落しない理由は何一つ見当たらず、短期投資家の需給に起因する減少であり、早晩修正されると思われます。

NYダウと日経平均の比較推移

この修正の動きを収益化する方法としては、米国株連動のブル型ETFと日本株連動のベア型ETFを同金額買うことが考えられます。