株式市場は楽観ムードだが…次のリスク要因は?
日本のゴールデンウィーク明けの昨日は、寄りは弱かったものの、日中を通して上昇を続け、更に今日は昨日の米国株上昇を受けて、日経平均は20,000円を回復しています。世界の経済活動は前代未聞の速度での後退が続いており、その象徴が米国雇用市場動向です。昨日発表された先週の失業保険申請者件数は317万人で、前の週の385万人から早や減少したものの、4月25日時点の継続受給者数は2,265万人であり、ウィルス感染の影響で米国では2ヶ月間で2,582万人が失業したことになります。
本日は4月の米国雇用統計の発表がありますが、非農業部門雇用者は2,200万人の減少、失業率は16.0%が予想されています。なお、非農業部門雇用者は20万人増が、経済の好調不調の分かれ目とされる指標で、2,200万人の減少がいかにものすごい数値か、おわかりいただけるでしょう。
昨日今日の株式市場上昇の背景として、欧米各地の一部地域で経済活動の制限が緩和されることがあります。現在の市場の織り込みは「4-6月期の景気は最悪だが、7-9月期から徐々に回復軌道に乗り、10-12月期移行は回復が加速」といういわゆるV字回復シナリオです。一部地域での経済活動制限の緩和は、このシナリオ実現への第一歩と捕らえられているということでしょう。逆に言えば、このシナリオが実現しそうもないと思える象徴的な出来事があれば、市場心理は一気に悪化するということです。
先日、ニューヨークのセントラル・パークの様子が報道されていました。ニューヨークではまだ制限緩和になっていませんが、待ちきれない人々(若者が多いように見えましたが)が大勢いました。屋外ですから「密閉」ではないですが、あきらかに「密集」「密接」な状況でした。つまり、上記シナリオの実現性を一気に打ち崩す、最も可能性が高い出来事は「感染の再加速」でしょう。潜伏期間から考えると、もし感染再加速が起こるとすれば、5月18日の週以降となるでしょう。
なお、日本の企業業績発表ですが、多くの企業が発表を延期しており、通常よりも発表の進捗が遅れています。すでに発表した企業の株価反応を見ると「2019年度の業績下振れには反応なし」「2020年度の業績予想は、現段階で発表なしはスルー、前提を決めて発表を行なった企業に関してはやや好感」「2020年度の配当予想を減配として企業にはネガティブ」といったところです。つまり、現段階では企業業績発表は上にも下にも市場変動要因になりにくい、ということです。
3月の安値から4月半ばまで戻って以降、株価は戻り高値圏でのもみ合いが続いていますが、その間の出来高は先物、現物ともに少なく、もっぱら短期投資家主導の相場で、中長期投資家は売りでも買いでも動いていないことが伺えます。目先、中長期投資家が買いで反応するようなポジティブ・ニュースフローは想定できず、何らかの悪材料をきっかけに明確な下落の動きとなり中長期投資家が売りで反応するまでは、「戻り高値圏での、レンジ内では値幅は出るが、出来高は少なく上にも下にも抜けない状態が継続する」を、引き続きメイン・シナリオとします。具体的には、日経平均20,000円超えは定着せず、19,000円台を中心とするボックス相場に戻る可能性が高いでしょう。