下げ渋る日本株の背景は?
昨日の米国株は大幅下落となり、NYダウは1.9%安、S&P500は2.4%安、NASDAQは3.0%安となり、3指数ともに5月以降で初めて終値が75日移動平均線を下回りました。直近高値からの下落率は、NYダウが8.3%、S&P500が9.8%、NASDAQが11.9%となっています。一方で日本株は、米国株に対して明らかに下げ渋っています。本日前場引け時点での直近高値からの下落率は、日経平均が1.6%、TOPIXが1.0%にとどまっています。この背景を考えてみたいと思います。
1.早期衆議院解散総選挙期待
まず事実として、日本株が米国株に対してアウトパフォームが始まったのが、米国株が直近高値をつけた9月2日からでした。そのタイミングでの日本特有の出来事は、首相交代です。このことから、「早期に衆議院解散総選挙が行なわれ自民党が圧勝して菅政権が安定長期政権になることに対する期待」が、背景ではないかと考えられます。しかし、菅首相は早期の解散総選挙実施には否定的なコメントをしていることに加え、国会招集日が10月23日か26日になるとの報道もあり、早期解散総選挙の可能性は消滅したと言えます。
2.グロース株とバリュー株の構成比率の違い
米国株が直近高値をつけた9月2日以降、世界的に株式市場ではグロース株が下落を主導し、バリュー株が相対的に堅調な値動きとなっています。日本株市場全体に占めるグロース株の構成比率は米国株よりもはるかに低く、バリュー株(景気敏感株+金融株)の構成比率がはるかに高いことが、米国株に対する日本株のアウトパフォームの背景である可能性があります。しかし、9月15日付のコメントでご説明したとおり「業績不振などが原因で株価が割安に放置されていたバリュー株」を「株価が出遅れていると理由でバリュー株を買う」とすることには、いかにも無理があり、長期間継続する現象ではありません。景況感がよくない中でのバリュー株物色は、これまでも2019年4月や2016年11-12月などに起こりましたが、いずれも持続期間は1ヶ月程度でした。
3.日銀のETF買い入れ
本日前場引け時点で、9月月初以来の日経平均、TOPIXはともにプラスです。一方で、9月には4日、9日、15日、17日、23日と昨日までで5回も、日銀はETF買い入れを行っています。本日も前場引け時点でTOPIXは、買い入れ出動の基準とされる前日比0.50%下落をわずかに上回る0.53%下落でしたので、日銀は本日も今月6回目となるETF買い入れを行っている可能性が高いです。今日の後場にどういう値動きになるかはわかりませんが、例えば昨日を例に取りますと、前場引け時点のTOPIXは0.54%下落で後場ETF買い入れが行われ引け時点では0.13%下落まで戻りました。つまり今月は、前場引け時点でETF買い入れ出動基準をわずかに上回る下落率で、後場に薄商いの中日銀のETF買い入れの市場インパクトによって株価が支えられている、ということが日本株が米国株に対してアウトパフォームしている背景だと考えられます。このことが背景である可能性が最も高いでしょう。
これは「前場引け時点で出動基準をわずかに上回る下落率」と「売買代金が少なくETF買い入れの市場インパクトが大きく出る」という2つの条件が重なって起こっている現象で、この2つの条件がいつまでも揃うことはないでしょう。
結論としては、
1.米国株の下落基調が継続する場合、いずれ日本株は売買代金を伴って大幅下落する。
2.米国株が短期的に反発しても、日本株は下落していない分、戻りも鈍い。(上昇時には日銀のETF買い入れも入らない。)