11月FOMC終了-予想通りテーパリング開始決定
昨日終了したFOMCで、事前予想通り11月半ばからのテーパリング開始が決定されました。これまでFRBは毎月米国債800億ドル、住宅ローン担保債券400億ドルの合計1,200億ドルを買い入れていましたが、これを「11月には米国債700億ドル、住宅ローン担保債券350億ドルの合計1,050億ドル、12月には米国債600億ドル、住宅ローン担保債券300億ドルの合計900億ドルを買い入れる」とされ、その後については「毎月同様の債券買い入れ額減速が適切になる可能性が高いものの、経済見通しの変化に応じて妥当だと判断される場合には、購入ペースを調整する用意がある」とされました。
次回のFOMCが12月15日であることを考えると、FRBとしては「次回会合までの買い入れ減額計画を具体的に示し、その後の減額計画は次回会合で発表する」という方針になったようであり、この方針はテーパリング終了まで継続されると見られます。テーパリング終了の目的が、必要となれば利上げを実行できる体制を確保する、ということであることを踏まえると、減額ペースがスローダウンされる可能性はないと考えられ、実際には「基本的には毎月150億ドルずつの減額を継続するが、もしインフレ上昇が当初の見込みよりも長期化しそうだと判断されれば減額ペースを加速させる」ということだと解釈されます。
これを受けて米国債券市場は下落し、米国10年国債利回りは前日引けの1.55%(期待インフレ率2.52%&実質金利-0.97%)から1.61%(期待インフレ率2.57%&実質金利-0.96%)に上昇しました。これはFRBが高インフレ長期化リスクを意識していることが確認され、期待インフレ率上昇により利回り上昇した、という反応だと思われます。一方で、米国株は上昇で反応しました。金利上昇が追い風となるNYダウだけではなく、金利上昇が逆風になるNASDAQも上昇となりました、これは「テーパリング終了後も、利上げには辛抱強くなれる(利上げは慎重に判断する)」という文言を好感したため、とされています。しかし実際には、テーパリングのペースと同様に利上げも「その時の状況次第」ということであり、利上げをしないことが約束されたわけではないことを考えると、米国株の反応は楽観に触れすぎという印象です。
米国債券市場では、2022年後半に2回の利上げ、2023年には更に3回の利上げが織り込まれており、現時点でのこの織り込みは妥当だと考えられます。つまり、米国債券市場はFRBのメッセージを正しく反映しているにもかかわらず、米国株式市場は依然として金融緩和長期継続を織り込んでいる状況であり、なんらかのきっかけで米国株が調整に向かう日は近いと思われます。そのきっかけになりそうな候補としては、明日の雇用統計、11月10日のCPI、13日の消費者マインド指数、16日の小売売り上げといった重要経済指標発表のほか、原油価格の85ドルを超え100ドルに迫る上昇、米国10年国債の1.75%超えの上昇などが挙げられます。