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2021年3月18日のマーケット・コメント

3月FOMC終了-「火に油」は避けられたが「火消し」には至らずか

 

昨日、注目のFOMC声明とドットチャートが発表されました。ドットチャートでは、2022年内の利上げ予想者数が4人に増加(利上げ1回予想が3人、2回予想が1人)、2023年末までの利上げ予想者数が7人に増加(1回1人、2回1人、3回3人、4回2人)となりました。パウエルFRB議長は会見で「FOMCメンバーの大半は2023年末までの利上げ開始を見込んでいない」「経済活動と雇用情勢を示す指標はここ最近上向いたが、ウィルス感染による悪影響が最も深刻だった業種はなお脆弱だ」「インフレ率は引き続き2%を下回っている」とハト派的な発言を行ないました。金利上昇に関しては「市場が無秩序な状況になれば懸念するだろう」と3月4日と同様の発言を繰り返しました。

FOMCドットチャート20210318

米国10年国債利回りは、FOMC声明発表前には一時1.69%まで上昇していましたが、発表を受けてやや低下し1.65%で引けました。それでも引けベースでの最高値となっています。米国株は発表までは小幅安での軟調推移でしたが、発表を受けて反発に転じて3指数ともに小幅高で引けました。2022年中利上げ開始予想者数が1人から4人に増加、2023年末までの利上げ予想者が5人から7人だったことが、市場が身構えて覚悟していた数字と同様だったということでしょう。

 

とは言え、米国10年国債利回りは前日の1.63%から1.65%に上昇し、その要因は実質金利が-0.68%から-0.66%への上昇で、金利の急上昇は無かったものの金利上昇基調に変化はありません。米国債需給にとって重要な要因である「SLR条件緩和措置の延長」に関しては、今回のFOMC後の会見でパウエル議長は「数日中に発表することがあるだろう」と発言するにとどめました。

 

SLR条件緩和とは、金融機関の自己資本比率を算出するに当たり、昨年3月に米国債券を資産残高から除外する措置を2021年3月末までの1年間に限り認める、とした措置です。もし当初の予定通り2021年3月末でこの措置が解除されると、金融機関による保有米国債券残高の削減が見込まれ、債券下落(金利上昇)要因です。FRBとしては、債券市場の波乱は招きたくないものの、延長するには大義名分が必要で、延長したとしても期限終了時には同様の事がいずれ起こることは避けられないことを考えると、延長はしない可能性が高いでしょう。金利上昇基調は継続の見込みということです。

 

ところで、現在の「インフレの火種が生まれ、中長期金利が上昇基調にあるにもかかわらず、株式市場がそれを無視して上昇を続けている」という状況は、1987年と同様です。1987年は最後には、米国株式市場が1日で20%以上下落したブラックマンデーを迎えました。現在ではさすがに1日に20%下落することはないとは思われるものの、金利上昇に株式市場がある時点で耐えられなくなり、ボキッとへし折れるような下落が起こり得ることは想定しておくべきでしょう。