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2021年4月20日のマーケット・コメント(2)

米国株式市場の状況-興味深い記事

 

ブルームバーグに、米国株式市場の需給状況に関する興味深い記事がありましたので、ご紹介します。記事のリンクは以下になります。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-20/QRTD2MT0G1KW01?srnd=cojp-v2

 

記事の趣旨としては、

「米国株式市場のカラ売り(ショート)ポジションが、過去最低水準まで低下している。」

「米国株ヘッジファンドのロング(買いポジション)が数年ぶりの高水準にある。」

「米国株オプション市場で、プット・コール・レシオが急上昇している。」(注:プット・コール・レシオ=プットの建て玉合計÷コールの建て玉合計)

米国株の状況20210420

これらを言い換えれば、

「米国株ヘッジファンドは、過去最高水準の強気ポジションとなっている」

「ボラティリティの低下を受けて、下落に対する保険としてプットを買う投資家が急増している」

ということになります。これらのことから示唆されるのが以下になります。

 

1.過去最高水準の強気ポジション

ロングは増加余地が限られ、ショートは削減余地が限られる、ということであり、ロングの増加(買い増し)もショートの削減(買い戻し)も「買い要因」です。一方で、ロングは削減余地が大きく、ショートは増加余地が大きいということであり、ロングの削減(一部売却)もショートの増加(カラ売りの売り増し)も「売り要因」です。つまり、買い要因の余地は少なく売り要因の余地は大きい、ということになり、何らかのきっかけで明確な下落が始まった場合、意外な深さまで調整しやすい状況だと言うことです。

 

2.プット・コール・レシオが急上昇(この部分はかなり専門的な説明になります)

VIX指数がコロナ後の安値更新の動きとなっていることに象徴されますが、オプション市場でのインプライド・ボラティリティが低下してプットの価格が下落していることを受けて、多くの投資家がおそらく現状水準からかなり下の行使価格のプットを買っている、ということです。ここで重要なことは、先物やオプションは常に建て玉と同数の買い手と売り手が存在する、ということです。つまり、プットの買い手が増加した分、売り手も増加しているということで、多くの場合、売り手は証券会社の自己部門などの「業者」です。プットの売り手は、株価が下落してきて行使価格に近づいてくると、株価下落による損失を回避するために先物を売ってヘッジします。いわゆるデルタ・ヘッジです。この動きが往々にして下落を加速させます。つまり「プット・コール・レシオの急上昇」は、株価下落が2次曲線的に加速しやすい状況だということです。

 

結論としては、時期は特定できませんが、何らかのきっかけで米国株の明確な下落が始まった場合、下落は加速しながら意外な深さまで調整しやすい状況だと言うことです。「ファンダメンタルズの変化ではなく、需給調整による大きな調整」の例は、2018年2月の{VIXショック}です。その時のNYダウは、2週間で12%の下落となりました。