米CPIは予想比大幅上ぶれ
昨日発表された米国CPI(消費者物価指数)ですが、CPI総合は前年比では事前予想の3.6%を大幅に上回る4.2%で、食品とエネルギーを除いたコアCPIも事前予想の2.3%を大幅に上回る3.0%でした。前年比では、コロナ・ショックで急激に落ち込んだ昨年の水準が低いという要因もありますが、前月比で見てもCPI総合は事前予想の0.2%を大幅に上回る0.8%、コアCPIも事前予想の0.3%を大幅に上回る0.9%で、インフレ圧力が予想以上であることが鮮明となりました。
これを受けて米国市場では、株下落、長期金利上昇(長期債券下落)、米ドル上昇となりました。米国10年国債利回りは、1.62%から1.69%に上昇し、その0.07%上昇の内訳は実質金利(物価連動国債利回り)が-0.92%から-0.87%に0.05%の上昇、期待インフレ率が2.54%から2.56%に0.02%の上昇となっています。CPI上ぶれを受けての金利上昇で、実質金利上昇の寄与度の方が高くなったのは、期待インフレ率が先行して上昇していたことに加え、今回のCPI上ぶれと「目先のインフレ率上昇は一時的であり、テーパリング議論は時期尚早」とかたくなに言い続けるFRBの姿勢を合わせて考えると、今後のリスクとして、1.まずはFRBの政策対応が後手後手となりインフレ圧力が加速、2.FRBが自らの政策対応が後手後手だと自覚した時に、一気に緩和策縮小を加速させる、という展開を意識し始めた、ということではないかと思われます。
株式市場は「昨年来の株価上昇率が高かった高バリュエーション銘柄が好業績でも売られる」「超緩和策の修正を迫られるインフレ圧力が見られ、中長期金利が上昇基調を続ける見通し」ということで、「上昇」のフェーズから「高値もみ合い」のフェーズに移行したことが確認されました。日経平均は3日間で2,000円もの下落となっています。ただ御注意いただきたいのは「下落」のフェーズになったのではない、ということです。現在はもみ合いのレンジの下限を試しに行く展開の途中であり、下限を付けた後はかなりのリバウンドがある可能性が高い、ということです。
日経平均で言うと、レンジ下限の候補としては昨年12月にもみ合った26,500円近辺の可能性が最も高く、次いで年初につけた年初来安値の27,000円近辺と200日移動平均線の26,339円が挙げられます。「もみ合い相場」では、順張りではなく逆張りが鉄則です。つまり、高いところを売り上がり、安いところを買い下がる、という戦略です。現在想定されるもみ合いのレンジは26,500-29,500円なので、27,000円割れは買い下がり、29,000円超えは売り上がりです。もちろん今後の展開次第で想定レンジの修正が必要になる可能性はありますが、それはその都度お伝えしていきます。なお「高値もみ合い」から「下落」への変化は、上記の1.2.のリスク・シナリオが現実化することを市場が本格的に織り込み始めることがきっかけとなると思われ、それをわかりやすくモニターする方法は、米国10年国債利回りが2%を越え、それを嫌気して株が大幅下落することです。