イエレン米財務長官発言に米国株は下落反応
昨日、前FRB議長のイエレン財務長官が、米国商工会議所での講演で「インフラ投資と増税はパッケージで米国企業の国際競争力を改善させる。企業側も公平な負担をすべきだ」と発言し、バイデン政権が大型財政出動の財源の一部に増税を充てる方針であることを改めて示しました。この発言を受けて、米国株は引けにかけて急落となり、NYダウは引け際の15分間で約200ドル下落しました。
バイデン政権が、企業の法人税や富裕層の所得税の増税を行なおうとしていることは、新しいニュースではありません。しかし、2016年に市場が混乱状態だった際に何度も利上げを見送るなど、FRB議長時代には市場に寄り添っていたイエレン財務長官が、敵地とも言える商工会議所でそのような発言をしたことで、米国株式市場は増税方針の本気度の高さを感じ取った、ということでしょう。
昨日時点の米国株式市場は、NASDAQは4月29日の今年の高値(=史上最高値)から6.4%下落の水準ですが、S&P500は5月7日の今年の高値からわずか2.6%下落、NYダウは5月10日の今年の高値からわずか2.9%下落の水準に過ぎません。米国株市場は一旦の利食い売りのきっかけを待っている状況であり、そのきっかけが5月前半はインフレ加速でしたが、今度は増税がとってかわる展開が想定されます。
昨年3月のコロナ・ショック以降の上昇相場でも何度か調整はあり、高値から安値までの下落率は、昨年6月は8.3%、昨年9月は10.6%、昨年10月は8.9%、今年2月から3月にかけては5.7%でした。現在の米国株市場が、企業業績や米国経済の急回復を完全に織り込み、その延長線上の事象とも言えるインフレ加速や増税に下落反応し始めたことを踏まえると、日本株に続き米国株も「上昇」のフェーズから「高値もみ合い」のフェーズに移行した可能性が高いと思われます。その見方が正しいとすれば、S&P500やNYダウは高値から10%程度は調整するはずであり、S&P500で3,800程度、NYダウで31,500程度が目安となります。
今週の日本株は、月曜日には独自の大幅下落、火曜日は独自の大幅上昇となりましたが、本日を含めて3日間で見ると、米国株に対する過度な割り負け感は解消されました。もし今後、S&P500やNYダウが高値から10%下落するのとまったく同じように下落するとすれば、日経平均の調整目安は26,000円程度となります。S&P500やNYダウの調整時の下落率が10%程度であるのに対し、日経平均のこれまでの平均的な調整時の下落率は15%ていどでした。2月16日高値の30,715円から15%下落は26,107円となり整合的です。その水準には200日線(現在26,444円)もあります。