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2021年6月16日のマーケット・コメント

米PPI&小売統計-FOMCの注目点

 

昨日発表された米国PPI(生産者物価指数)ですが、事前予想の6.2%(前年比)を上回る6.6%でした。先週のCPIに続き、予想比で上ぶれとなる結果でした。一方、同時に発表された小売売り上げは事前予想の-0.8%(前月比)を下回る-1.3%となりました。それらを受けた米国市場の反応は、株は小幅下落、債券と米ドルは横ばいでした。強弱まちまちとなった結果に加え、翌日にFOMCを控えて方向感を出せなかったということでしょう。

 

今晩(日本時間明日早朝)のFOMCですが、政策変更に関する投票や声明文がタカ派シフトすることは考えにくいため、注目材料はドットチャートの変化でしょう。前回3月17日会合でのドットチャートは、関係者17人のうち3人が2022年中に1回の利上げを予想し、1人が2回の利上げを予想しました。2023年に関しては、7人が利上げを予想し、累計の利上げ回数としては2人が4回、3人が3回、1人が2回、1人が1回でした。おそらく2022年中の利上げを予想した4人が4回の2人と3回の2人だと思われますので、2022年中の利上げを予想しなかった14人のうち2023年の利上げに関して、1人が3回、1人が2回、1人が1回の予想だったと思われます。

 

市場のコンセンサスは「2023年の中央値が1回の利上げになる(17人のうち過半数が2023年までに最低1回の利上げを予想する)」です。つまり、前回は2023年までに利上げがないと予想した10人のうち、2人以上が2023年中の利上げを予想する、ということです。したがって、今回の注目点は2023年の中央値が0回のままなのか、コンセンサス通り1回に変化するのか、コンセンサスを超えて2回に変化するのか、です。ただ2023年までにはまだ時間があるので、もし中央値が2回となっても市場の衝撃はそれほど大きくはならないと思われます。

 

市場がより大きな衝撃を受けるのは、2022年までに利上げを予想する人数が、前回の4人から増加することだと思われます。前回の債券買い入れ政策のQE3は、毎月の買い入れ額が国債450億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)400億ドルで、買い入れ額の減額(テーパリング)は2014年1月に開始10月に終了でした。現在の毎月の買い入れ額は、国債800億ドルMBS400億ドルとQE3よりも多いため、テーパリング期間は前回よりもやや長期化する可能性もあります。利上げはテーパリング終了後のはずなので、「2022年中の利上げ予想」は「2021年内にテーパリング開始予想」を意味します。

 

FOMC声明文やパウエル議長の会見でタカ派シフトがあるとは思えず、FOMCの議論の詳細は、3週間後の議事録発表まで判明しません。しかし、ドットチャートは各関係者の意見がリアルタイムで反映されるため、先行指標としての価値は今回は特に高いと思います。

FOMCドットチャート20210318