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2021年8月4日のマーケット・コメント

あまりにも上値が重い日本株-修正が入る要因は?

 

昨日の米国株は上昇し、S&P500は史上最高値更新となりました。他の2指数も、NYダウは史上最高値まで0.2%、NASDAQは史上最高値まで0.7%の水準であり、最高値圏といえる状況です。ところが日本株は、今週月曜日には月末要因で先週金曜日に下げた分を戻したものの、昨日今日は米国株上昇にもかかわらず、軟調な展開となっています。7月29日付のコメントでもご説明しましたが、NYダウと日経平均の差は史上最大に広がっており、その要因は中国株下落ではないかと考えていました。

 

ところが、ここ数日は中国株は反発の動きになっているにもかかわらず、NYダウと日経平均の差は更に拡大する動きとなっています。そうなるともはや要因は、米国長期金利の低下とそれによるドル円の下落(円高ドル安進行)しか見当たりません。米国10年国債利回りは、昨日の引けは1.17%(期待インフレ率2.37%&実質金利-1.20%)と、引け値ベースでは3月末に1.74%でピークをつけて以降の最低水準となっており、特に実質金利は史上最低水準を更新しています。それまでの最低水準は昨年8月末と今年1月初めに付けた-1.1%でした。

 

米国10年国債利回りは、6月16日FOMCでタカ派シフトしたドットチャートが示された直後に1.58%(期待インフレ率2.33%&実質金利-0.75%)から、もっぱら実質金利の低下が続く形で、利回り低下が続いています。なぜ実質金利が低下を続け史上最低値を更新するに至っているのか、その要因はわかりません。短期ポジションの調整と片付けるには、あまりにも期間も長く変動幅も大きすぎます。

 

現実として長期金利が低下しているということは、その根拠となる要因は不明ながらも、米国債券市場は米国経済の先行きに不安を持っている、ということであり、株式市場の業種構成で景気敏感性が低い米国株が選好され、景気敏感性の高い日本株は選好されていない、ということだと思われます。日本株が米国株に劣後する動きは、日経平均が高値を付けた2月半ば以降続いていましたが、ここに来て動きの違いが鮮明になったのは7月26日以降で、ちょうど同じタイミングで米国実質金利が史上最低値を更新しています。

 

最近の値動きを詳しく振り返ると、7月16日の日経平均は28,003円、NYダウは34,688ドルで、翌週の月曜日は日米ともに大幅下落となりましたが、米国株はその後持ち直し、7月23日のNYダウは35,062ドルと7月16日を上回りましたが、7月26日の日経平均は27,833円と7月16日を上回れず、その後も28,000円を越えられない展開となっています。

 

つまり、米国株に対する日本株の出遅れ感修正には、米国実質金利の上昇による米国長期金利の反転が必要だと思われるということです。その要因になりえるのは、FRB高官によるタカ派的発言や、予想よりも強い雇用統計やインフレ統計の発表です。ただ実際には、日本株の市場参加者の多くは、米国の金利動向を詳しくフォローしているとは思えないため、米国長期金利上昇によるドル円の上昇(円安ドル高進行)に反応する、ということになりそうです。

 

以上は、米国長期金利が米国株に悪影響を及ぼすほどは上昇しない、ということを前提にしています。米国10年国債利回りが1.5%を超えて上昇するようだと、今年の3月や5月のように米国株がネガティブ反応する可能性が高まるため、その点はご留意ください。(米国株が明確に下落すれば、世界同時株安となる可能性が高いので。)