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2021年8月5日のマーケット・コメント

米国実質金利低下の流れに転機か

 

昨日クラリダFRB副議長が講演を行い「現在行なわれている金融・財政政策は、年内に見込まれる力強い経済活動拡大を支援し続け、その場合は年内のテーパリング開始を支持する」「FFレート引き上げ(利上げ)の条件は、2022年末までには達成されているだろう」と発言しました。つまり、「年内のテーパリング開始、2022年内のテーパリング終了、2023年早期の利上げ」を予想するとしました。一方、昨日発表されたADP雇用統計は、事前予想の69万人増を大幅に下回る33万人となりました。

 

債券市場にとっては強弱材料の混在となったわけですが、米国10年国債利回りは前日の1.17%(期待インフレ率2.37%&実質金利-1.20%)から1.18%(期待インフレ率2.34%&実質金利-1.16%)にわずかに上昇となりました。ただ注目すべきは実質金利で、前日の-1.20%という史上最低の水準から-1.16%に上昇しています。昨日のコメントでご説明したように、今回のクラリダ副議長の発言で、米国実質金利の一方的な低下基調は転換した可能性が高いと思われます。ドル円も欧州市場では一時108円台後半まで下落していましたが、米国市場では109円半ばまで戻っています。

 

クラリダ副議長の予想内容は、6月16日FOMC後の市場コンセンサスに沿う内容だと言え、サプライズ的要素はありません。ただ、ここで改めて金融政策正常化の今後予想される軌道が明確に示されたことにより、FOMC後からの一方的な実質金利低下分が修正される可能性が高いでしょう。なお、6月17日時点の米国10年国債利回りは1.51%(期待インフレ率2.30%&実質金利-0.79%)、ドル円は110.21円でした。

 

日経平均は6月16日FOMC後、6月21日の大幅下落を除くと、しばらくは28,000円台後半での推移でした。米国金利大幅低下が修正されていけば、日経平均も28,000円台半ばから後半程度までは戻る可能性が高いと思われます。ただ、上値抵抗線となっている75日線は28,586円、2月高値から3月高値、4月高値、6月高値が結べる抵抗線(添付ファイル参照)が29,000円ちょうどまで低下してきており、29,000円を超えることは困難だと考えます。

日経平均抵抗線20210805

ここで余談にはなりますが、チャート上のトレンドラインの意味の強さについてご説明します。小学校の算数の領域の話ですが、2点間にはいつでも直線が描けます。したがって、2点しか通っていないトレンドラインには何の意味もありません。しかし、3点を通る直線が描けることは稀であり、3点を通るトレンドラインには大きな意味が出てきます。今回の場合、トレンドラインは4点を通っており、3点よりも更に希少性は高く、意味は非常に大きいと言えます。したがって、可能性は低いと考えますが、もしこのトレンドラインを上抜けた場合、チャート上では強烈な買いサインとなります。