過去1ヶ月の外人売買動向
日経平均が、7月以降上値を抑えていた28,000円を超えたのが8月31日で、菅首相の総裁選不出馬表明を受けて急上昇したのが9月3日でした。9月3日は28,600円程度から一気に29,200円程度まで上昇し、更にその日のイブニングで先物は29,800円まで上昇しました。その後も上昇は続き、9月14日には2月16日の高値30,715円を抜き30,796円まで上昇し、そこでピークアウトして現在に至ります。
日本株上昇の背景は「首相交代に期待した外人買い」と言われていますが、それが本当なのかを、日本取引所が発表している投資主体別売買動向から見てみます。(注:投資主体別売買動向は毎週木曜日15時に、その前週の売買動向が発表されます。)
外人投資家の週ごとの売買動向は以下になります。
8月30日の週:現物3,670億円の買い越し、先物2,956億円の買い越し
9月6日の週:現物3,011億円の買い越し、先物7,576億円の買い越し(9月3日のイブニングは9月6日約定扱いになるので、ここに含まれます。)
9月13日の週:現物500億円の売り越し、先物2,894億円の買い越し
9月20日の週:現物2,692億円の売り越し、先物115億円の売り越し
4週間合計:現物3,489億円の買い越し、先物1兆3,311億円の買い越し
以上ご覧いただきますように、外人はこの間もっぱら先物を買っています。現物は9月13日の週カラ売り腰に転じ、9月6日の週以降の3週合計では売り越しています。先物の買い手は、日本株の短期的な水準訂正を狙った短期投資家、トレンド追従自動売買のCTA、首相交代での上昇をヘッジする一部中長期投資家などが考えられます。まず、中長期投資家に関しては、総裁選が最も無難な結果となり、首相交代で日本株上昇の可能性は低下したと考え、買いヘッジは徐々にクローズしてくるでしょう。短期投資家とCTAに関しては、現状水準近辺が平均買いコストと見られ、下落の方向性が出れば手仕舞いを急ぐでしょう。何らかのきっかけで下落の方向性が出れば、28,000-28,500円程度までの下落は速いと思われます。
ところで自民党総裁選は岸田氏勝利で終わりました。掲げている政策のうち、一つ市場にネガティブなインパクトを及ぼすものがありました。所得税負担率が1億円を境に低下していく「1億円の壁」を打破する、というものです。この背景は、給与所得税が最高税率50%の累進税率となっているのに対し、金融所得税は一律20%であることが主要因です。つまり「1億円の壁の打破」は「金融所得税率の累進化」を意味します。岸田政権誕生後に、この「1億円の壁の打破」にどれだけ積極的に取り組んでいくかは不明ですが、株式市場にとっては大きなリスクとして認識しておくべきでしょう。