パウエルFRB議長の議会証言
昨日パウエルFRB議長は、米上院銀行委員会の公聴会で証言を行ないました。その内容は「高インフレがもたらしている苦難を我々は理解しており、インフレを押し下げることに強くコミットして迅速に動いている」「金融環境は引き締まり、一連の利上げを織り込んできている。それは適切なことであり、われわれは進んで利上げを行なう必要がある」「我々の意図する結果では決してないが、米国経済がリセッション(景気後退)に至る可能性があるのは間違いない」「我々が目指すのはソフトランディング(景気後退に至ることなくインフレを沈静化すること)だが、それは非常に困難だろう。戦争や商品価格高騰、サプライチェーン問題の深刻化など、ここ数ヶ月の出来事により困難さが著しく増している」というものでした。
つまり要約すると「米国経済の成長よりも、高インフレ鎮静化を優先して金融引き締めを続ける。その結果、米国経済はリセッションに至るかもしれないが、それは仕方がない」ということであり、米国経済が犠牲になっても金融引き締めを続けて高インフレ鎮静化に全力で当たる、ということを正式に表明した形です。
これまでも何度もご説明してきたように、現在の政治化の最大の関心事は「高インフレを沈静化させて国民の不満を取り除くこと」であり、FRBとしてはそれに応えるべく(正確には「政治家に対して、全力で応えているように見せるべく」)、今年年内は全速力で利上げを継続する、ということでしょう。私は7月27日と9月21日にそれぞれ0.75%、11月2日と12月14日にそれぞれ0.50%の利上げの、年内合計あと2.50%の利上げを予想します。FFレート誘導目標は現在は1.50-1.75%なので、年末時点では4.00-4.25%に到達するということです。
中間選挙が終わり政治家からの圧力が後退すると、年明けには「高インフレ沈静化に対する利上げの効果」を検証しようとする機運が高まることが予想され、その答は「利上げのインフレ沈静化への効果はまだ明確になっていないが、利上げの米国経済への悪影響が広がってきたため、当面は現状の金融政策を維持し、引き続きインフレ沈静化への効果を見極める」となるでしょう。つまり、来年の早い時期に利上げは停止されるものと思われます。その後、来年後半には緩やかな利下げに転じることを余儀なくされるでしょう。
昨日時点のFFレート先物をみると、2022年末時点は3.375%(年内あと1.75%の利上げ)、金利のピークは2023年4月3.625%(今後の利上げ合計2.00%)で、その後は非常に緩やかな利下げを織り込む形状になっています。つまり私の予想は、展開は市場予想に沿ったものだが、金利のピークは市場予想よりも高く、時期は市場予想よりも早い、ということになります。