シカゴ筋ポジションに大きな変化&株の見通し
先週末に発表された8月9日時点のシカゴ筋ポジション(非商業ベース)ですが、2週続けて大きな変化がありました。7月26日時点(ドル円引け値136.91円)では、円ショートが105,293枚、円ロングが43,812枚でしたが、8月2日時点(ドル円引け値133.17円)では円ショートが93,186枚、円ロングが50,433枚となり、さらに8月9日時点(ドル円引け値135.05円)では円ショートが77,365枚、円ロングが52,333枚となりました。つまり、差し引きのネット円ショートは7月26日時点の61,481枚から8月9日時点では25,032枚に大幅減少となりました。
25,032枚は、2021年3月9日時点(ドル円引け値108.48円)のネット円ロング6,514枚から、2021年3月16日時点(ドル円引け値109.00円)のネット円ショート39,368枚となって以来、ネット円ショートとしては最低水準です。つまり、ドル円の反落エネルギーはすでにほぼ放出され切った状況にあり、次のドル円上昇のきっかけから始まるドル円上昇局面では、7月14日の高値139.39円を上抜き、140円突破する可能性が高まったと言えます。
一方、株ですが、先週金曜日が世界的なベアマーケット・ラリーのクライマックスだったと思います。米国株が年初来安値をつけた6月からを振り返ると、6月時点では「FRBは引き締め全速力を維持し、その結果2023年はリセッション入りの可能性大」を織り込んでいました。状況としては、短期投資家のポジションはショート(弱気)寄りに大きく傾きました。その後、4-6月期企業業績の下振れ懸念がありましたが、発表された業績はマチマチな結果で株式市場全体の下落要因とはならず、日本株では7月20日にベアマーケット・ラリー第1弾が起こりました。(材料ない中、日経平均は719円高)さらに7月27日FOMCでは0.75%の利上げが決定されるも下げ材料にならず、下げそうで下げない状況が続く中で再び短期投資家のポジションはショート寄りになり、8月10日の米CPIが予想を下回ったことで、目先の下落材料を見失い、短期投資家は一斉に損切りの買い戻しを余儀なくされました。日本では8月11日が祝日だったことで、先週金曜日は日経平均は再びたいした材料のない中で728円高となりました。
つまり過去2ヶ月間で、ファンダメンタルズとしては、
1.FRBの金融引き締め継続姿勢には変化ない
2.4-6月期業績及び今後の業績見通しは、(懸念していたほどではなかったものの)若干ながら下方修正された
3.7月の米CPIの減速幅は予想をわずかに上回ったが、ほぼすべての要因は原油価格下落で説明が付く
ということであり、6月安値からの株の大幅上昇を裏付ける要因は、ファンダメンタルズからは見当たりません。
ということは、過去2ヶ月間の株の戻りの背景は、ファンダメンタルズの好転を背景にした中長期投資家の買いではなく、下落に賭けた短期投資家の損切りの買い戻しだったと思われます。これまで何度もご説明していますが、投資家があわてて取る投資行動は「含み損を抱えたポジションの解消」です。この観点からも「たいした材料のない中での大幅上昇」=「含み損を抱えた売り方の買い戻し主導」と考えられます。
今後の見通しですが、以下のどちらかが起こるまでは、戻り高値圏での値動きの荒いもみ合いと予想します。
1.ファンダメンタルズの何らかの悪化を受けて、中長期投資家が株の削減に動き下落が始まり、下落を受けて短期投資家がロング(上昇に賭けるポジション)を解消、さらにショート(下落に賭けるポジション)を取り始めることで下落が加速。
2.ファンダメンタルズには目立った変化は無い中で、上値が重いことを受けて短期投資家がロングを利食い始めることで株価下落が始まり、下落を受けて短期投資家がロング(上昇に賭けるポジション)を解消、さらにショート(下落に賭けるポジション)を取り始めることで下落が加速。
次の安値目処としては、上記1.の場合は年初来安値(日経平均24,682円)トライ、上記2.の場合は26,000円割れが想定されます。