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2022年8月5日のマーケット・コメント

市場の「FRBハト派化」の織り込みの修正が始まるきっかけは?

 

前回のコメントで、多数の地区連銀総裁が「FRBがハト派化するという市場の織り込みは間違っており、FRBはインフレが明確に沈静化するまで金融引き締めの手を緩めることはない」という趣旨の発言をしてきました。昨日もクリーブランド連銀のメスター総裁が「FRBはインフレ抑制にコミットしており、需要を緩和するために政策金利を4%を少し上回る水準まで引き上げる必要がある」と発言しました。

 

一方、米国市場はFRB高官の相次ぐ発言をほぼ無視した動きとなっており、米国10年国債利回りは6月14日の3.48%(期待インフレ率2.65%&実質金利0.83%)から低下傾向が続き、昨日引けは2.69%(期待インフレ率2.46%&実質金利0.23%)となっています。実質金利の大幅低下主導の金利大幅低下を受けて、米国株式は戻り基調が続いており、NYダウは6月半ばの安値から10.4%の上昇、S&P500は14.2%の上昇、NASDAQは20.4%の上昇となっています。

 

米国株式市場も米国債券市場も、4月から6月半ばまでは「FRBのタカ派化加速懸念」から大幅に下落し、最終的には両市場ともに短期投資家のショート・ポジション(下落により収益を得るポジション)が大量に溜まり、市場反転を受けて徐々に買い戻しを余儀なくされ、7月27日FOMC後の、28日、29日で、おそらくショートの買い戻しは出尽くし、ベアマーケット・ラリーは終了、というのが現状です。損切りの買戻しという行為を無理矢理正当化させるために「FRBはハト派化する」と跡付けで言い聞かせているにすぎません。

 

つまり、短期投資家の多くが、5月4日FOMC後にショート・ポジションを取り始め、その後の下落局面では順張りでポジションを増やし、7月半ば以降に損切りの買い戻しを迫られ月末を迎えた、と推察されます。一言で言うと「下落に賭けてみたが、損失に終わった」ということです。

 

現在は、短期投資家は一度失敗に終わった賭けをもう一度始めることに躊躇している、という状況だと思われます。そうでないのであれば、これだけ相次ぐFRB高官発言を無視し続ける結果になっていることを説明できません。今後想定される展開は以下の通りです。

1.中長期投資家が株の配分比率の削減を始める(株を売り始める)

2.株式市場は下落が始まる

3.ある程度株式市場が下落したところから、短期投資家がショート・ポジションを取り始める。

4.下落が加速する。

債券市場も同様ですが、債券の場合は上記の「株式」を「長期債券および低格付け債券」に置き換えてください。

 

上記1.が始まるためには、分かり易いきっかけが必要です。逆に言えば、判りやすいきっかけさえあれば1.が始まる状況です。きっかけの第1候補は、今日の雇用統計です。第2候補は8月10日のCPIです。どちらか単独ではなく、その両方の複合かもしれません。「FRBのハト派化」が間違いだという「答え合わせ」は次のFOMCということになりますが、それは9月21日であり、それまでには時間がありすぎます。それまでずっと今週のような「漂い相場」が続くとは思えず、1.の開始までそれほど時間がかかるとは思えません。