日本株の不自然な強さはメジャーSQが転機か?
9月2日以降、日本株は米国株と比較して明らかに下げ渋っています。昨日はようやく下への動きが出たかと思いきや、場中にじりじりと下げ幅を縮小、今日は昨日の下落の倍以上の上昇となっています。この背景を考えたいと思います。
まず、7月以降の値動きは完全に先物主導であることは事実(主体別売買動向から明らか)で、CTA(機械仕掛けの順張り戦略)が主な売買主体であることもおそらく正解だと思われますが、CTAは値動きに合わせて相場上昇時は機械的に買い上がり、相場下落時は機械的に売り下がるので、値動きを加速させる要因にはなっても、値動きの方向を作り出すことはできません。先物で値動きの方向性を作り出すことができるのは、裁量系の外人先物プレイヤー(マクロ系ヘッジファンド)かオプション・先物業者です。
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの大手プライム・ブローカーからの情報によると、マクロ系ヘッジファンドが日本株先物を積極的に売買している様子はありません。したがって消去法で、最近の先物の値動きの方向性を作り出しているのはオプション・先物業者の可能性が高いという結論になります。おそらく27,000円台のプットが「買い手=ヘッジ目的の一般投資家、売り手=オプション・先物業者」という構図になっており、業者がプットがイン・ザ・マネー(株価が行使価格を下回る)になることを防ぐべく、先物で上への値動きを出していると推察されます。
注:プットとは行使価格で売る権利。例えば行使価格が27,500円のプットの場合、SQ値が27,000円であれば、買い手は「500-プットの買いコスト」円が利益に、売り手は「プットの売りによって売られたプレミアム-500」円が損失になります。SQ値が28,000円であれば、買い手は「プットの買いコスト」の損失が確定し、売り手は「プットの売りによって売られたプレミアム」の利益が確定します。つまり、買い手は「損失限定、利益無限定」売り手は「利益限定、損失無限定」です。これでプットの売り手の業者が頑張るインセンティブがご理解いただけたでしょうか。
これとまったく同じことが6月のメジャーSQでもありました。6月のメジャーSQに向けて、日本株は米国株と比較して不自然に強く、SQ前日に高値を付けて、SQ当日は寄りだけ不自然に強くそのあとは大幅下落、翌週は大暴落という展開でした。今回もその時とまったく同じ展開になるとは限りませんが、6月の時も今回も、日本株が米国株に対して強い理由は何も見当たらない、という点も共通しており、今回も明日のメジャーSQ通過で、少なくとも不自然に押し上げる力が消滅する可能性が高いと思われます。
今日は注目のECB会合があります。市場が予想する利上げ幅は0.75%と0.50%で半々に割れていますので、0.75%に決定されれば市場にとってはネガティブです。欧州各国のインフレ率も米国と同水準であることを考えると、FRBと同様にECBもこの局面で躊躇する理由はなく、利上げ幅は0.75%となると予想します。